『「本当の語彙力」がグングン伸びる本』 特設ページ
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はじめに 目次 おわりに
   

塾生徒・保護者の声/セミナー参加者の声/
著書に寄せられた感想――を一挙公開!

四六版 画像拡大
2016年2月16日発売
全192ページ
 
はじめに

 一般のお母さんお父さんを対象にしたセミナーの終わりの、質疑応答の場面です。
 ある参加者が、こう切り出しました。
「福嶋先生のおっしゃる思考技術の重要性については、よく分かりました。
 ただ、うちの息子は、とにかくまず言葉を知らないんです。先生が今日挙げてくださったいろいろな例文の中に出てきた、当たり前に知っていてほしいような単語も、うちの息子はかなり知らないと思います。
 先生、そんな子の語彙力を伸ばすには、どうすればいいんでしょうか?」

 実はちょうどその数日前にも、同様のことがありました。
 場所は、某公立小学校。
 先生方を対象にした研修会の講師として出向いたときのことです。
 同じように、研修会の最後で質問が出ました。
「本当に充実した内容でした。必ず授業で実践したいと思います。
 ただ、わが校の一定数の子は、文を読み書きする以前に、言葉そのものを知りません。いったいどうすれば、語彙力を高めることができるんでしょうか。それが、わが校の国語教育の、1つの大きな課題なんです」

 片や親から。
 片や教師から。
 短期間に同じことを言われ、私は痛感しました。
 語彙力を伸ばすことに特化した本が必要だ。
 学術的な本というよりは、読んだその日にその場で子どもと一緒に取り組めるような、具体的なアドバイスを総合的にまとめた本。
 ページの順に読まなくても、開いたところからすぐ役立てられるような本。
 そのイメージを形にしたのが、この本です。

 ところで、私はよく、授業で次のように話します。
「言葉を選んで使うようにしなさい。
 この「選ぶ」というのが、キーワードです。
 なんとなくではなく、意識的に、意図的に選ぶ。
 この言葉とあの言葉、どちらを使えばいいだろうかと、考えて選ぶ。
 書くときも話すときも、選んで使う。
 読むときや聞くときは、相手がなぜその言葉を選んだのだろうと考える。あるいは、選ばなかった言葉はなんだろうと考える。
 そういう習慣がつけば、語彙力はきっと伸びていきますよ」

 そのような指導を受け、子どもたちは着実に語彙力を伸ばしています。個人差はありますが、いろいろな変化が目に見えるようになっています。
 その変化について、ある子はこう言いました。

学校の先生が、言葉の選び方が大人びてきたねって、僕の作文をほめてくれました(小学4年・男子)

 またある子は、こう言いました。

お母さんが、反対語の知識に関してはもう私(娘)にはかないません、って言ってました(小学5年・女子)

 私は、日々、反対語を徹底的に教えています(反対語の重要性については第9項などを参照)。そのお母さんの言葉は、うそ偽りのない気持ちだと思います。
 また、あるお父さんは、こう話しました。

テレビを見ながら息子が突然、「今の意見、なんか変だよね、主観的には」なんて言ったときには、驚いちゃって、どう返事をすればいいか迷っちゃいました(小学6年生・男子の父)

「主観的」なんて、なかなか小学生の日常会話には出てこない。そういう意味でしょう。
 本当の語彙力というのは、そうやって日常の中で活用できることを指すのです。素晴らしい成長です。
 お母さんお父さんが、わが子の語彙力が伸びたと思えるときがあるとすれば、どういうときでしょうか。それはきっと、「主観・客観」などというような抽象的な言葉、すなわち抽象語を使い始めたときではないかと思います。
 そう言えば、こんな感想も受けたことがあります。
 中学生のときに通っていた子の言葉です。

「抽象語」とか「心情語」とか、そういうひとくくりの呼び方を意識できるようになったことが、今思うと、役立っていると思います(高校1年生・女子)

 たしかに、抽象語という言葉は1つのキーワードです(第6項などを参照)。
 この本では、そういった「言葉そのものを多角的にとらえ直す視点」を得られるようになっています。
 その意味では、次のような声も特筆すべきでしょう。

先生がおっしゃった、「体験がないと語彙も増えない。体験をとおしてこそ、語彙力は伸びる」というのは、なるほど目からうろこでした(小学校教師・女性)

 これは、先に述べたセミナーの参加者の声です。
 国語辞典にふせんを貼りまくり、辞書とお友だちのようになっている子も、意外に言葉を使いこなせないケースがあります。それは、自らの「体験」との結びつきを意識せず、単に辞書的な意味を覚えようとしているからかもしれません(第3~5項などを参照)。
 この「体験」の概念もまた、言葉そのものへの見方を変えてくれることでしょう。

 さて、いくつかの「声」とともに、この本の断片をお示ししました。
 ここまでをお読みになり、もしかすると、こう感じた方がいるかもしれません。
「その子たちの語彙力が伸びたのは、専門の先生が教えたからであって、親である私自身がいくら頑張っても無駄なんじゃないの?」
 いえいえ。そんなことはありません。
 よく考えてみてください。
 子どもと最も多くの時間を共有しているのは、教師ですか? 親ですか? 子どもが成長して独り立ちするまでの間、最も影響力を持つ大人は、教師ですか? 親ですか?
 どちらも、答えは明白です。
 親であるあなたこそが、お子さんの語彙力を伸ばす手助けができるのです。
 私など、週に1回・100分の授業で、教室という限られた場所において、アドバイスを与えているにすぎません。
 しかし、お母さんお父さんならば、毎日何時間でも、どこででも、声をかけることができます。
 その差は、歴然たるものです。
 この本を参考にし、あなたの働きかけを少し変えるだけで、お子さんは「本当の語彙力」を身につけることができるようになります。
 本当の語彙力が身につく。
 それは、「選ぶ」べき言葉の引き出しが単にたくさんあるだけでなく、その引き出しをいつでもどこでも開けられるようになっているということです。
 そして、1つの引き出しが開けば自動的に他の引き出しも開くようなスタンバイ状態になっているということです。
 それがいったいどういう状態を指すのか。
 それは、この本を読み進める中で、自ずと明らかになってくるでしょう。
 さあ、前置きはこのくらいにします。
 さっそく、先へ進むことにしましょう。
 

 

目 次

項目 見出し
はじめに 今こそ身につけておきたい「本当の語彙力」  
言葉を調べる準備を整えよう! 19
  ◇「国語辞典」は1冊で十分だと思っていませんか? 20
  ◇こんな辞典も揃えておけば鬼に金棒 22
  ◇ウェブを活用しなければ損をする 25
  ◇言葉の「使われ方」を調べるための秘密兵器 26
 2 言葉は耳から入る! 29
  ◇この習慣があるのとないのとでは大違い 30
  ◇同音異義語をキャッチしよう 31
体験を言語化する! 35
  ◇あなたのお子さんにも、こんなところがありませんか? 36
  ◇言語化する機会を増やす、とっておきの方法  37
  ◇「一文日記」に取り組んでみよう 39
  ◇この「型」を活用すれば語彙力がグンとアップ! 41
体験の量が、言葉の量につながる! 45
  ◇「知っている」の背景は2種類ある 46 
  ◇大切なのは「リアルな体験」 49
辞書を引いても言葉をうまく使えないのは、なぜか? 51
  ◇この表現、どこかおかしくありませんか? 52
  ◇言葉の裏に隠された「ニュアンス」を読み取ろう 54
漢字の部首に注目する! 57
  ◇これを意識するだけで、たくさんのことが見えてくる 58
名詞は〈抽象・具体〉で分類する! 65
  ◇長文読解でつまずく子の共通項 66
  ◇分類の基本は、こうなっている 67
  ◇名詞が出てきたら、この「問いかけ」をしてみよう 69
  ◇さまざまなジャンルの分類を知っておこう 73
語彙力とは、「区別力」である! 75
  ◇「言葉を知っている」ということの本当の意味 76
  ◇肝心なのは「相違点」を明確にできるかどうか 79
  ◇「点」ではなく「線」で、言葉をとらえるようにしよう 80
「反対語」こそが語彙力の中核! 83
  ◇この視点を持てば、おのずと「本当の語彙力」がついてくる 84
  ◇否定表現において役立つ4つのパターン 89
10 言葉を「区別」するための「7つの観点」を知ろう! 91
  ◇無限に思える「観点」もしぼり込むことができる 92
  ◇とりわけ重要な「3つの観点」とは? 93
  ◇これが語彙力をアップさせる「7つの観点」だ! 95
11 「時間の観点」で言葉を分けてみよう!――言葉を「区別」するための観点(1) 99 
  ◇「見る」と「見つめる」は、どう違う? 100
  ◇「跳ぶ」と「飛ぶ」は、どう違う? 102
  ◇「思う」と「考える」は、どう違う? 104
12 「空間の観点」で言葉を分けてみよう!――言葉を「区別」するための観点(2) 109
  ◇「海」と「湖」は、どう違う? 110
  ◇「区別」と「差別」は、どう違う? 112
  ◇この習慣を身につければ、語彙力をより強化できる! 115
13 「自・他の観点」で言葉を分けてみよう!――言葉を「区別」するための観点(3) 117
  ◇「ほめる」と「おだてる」は、どう違う? 118
  ◇「ボランティア」と「仕事」は、どう違う? 120
14 残る4つの観点で言葉を分けてみよう!――言葉を「区別」するための観点(4) 123
  ◇「魔法」と「手品」は、どう違う? 124
  ◇「冷静」と「興奮」は、どう違う? 125
  ◇「使用」と「利用」は、どう違う? 127
  ◇「幼い」と「あどけない」は、どう違う? 129
15 「ザバーン!」と「ザバンッ!」はどう違う? 131
  ◇次に挙げた2語は、それぞれどう違う? 132
  ◇「マンガ」も立派な学びの材料になる 135
16 外来語を、和語・漢語に言いかえる! 137
  ◇それぞれの用語の意味、ご存じですか? 138
  ◇実際に和語・漢語に言いかえてみよう 139
17 日本人はなぜ形容詞・形容動詞が好きなのか? 145
  ◇形容詞と形容動詞の特徴をおさえておこう 146
  ◇こんなときには、この形容動詞 147
  ◇どちらが客観的で、どちらが主観的? 149
  ◇形容詞・形容動詞の使いすぎにご用心 151
18 ことわざは「逆説」の宝庫だ! 153
  ◇ことわざの重要性に気づいていますか? 154
  ◇何かを主張するときの強力な武器 155 
  ◇これが「逆説」の型だ! 156
19 言葉が世界をつくる! 159
  ◇この言い分、一見正しいけれど…… 160
  ◇あなたは、どちらが「正しい」と思いますか? 161
  ◇語彙力を伸ばすべき最大の理由 164
20 子どもをその気にさせる、ちょっとした方法 167
  ◇さあ、あなたも今すぐ実践してみよう! 168
付録 「本当の語彙力」を伸ばす! 反対語一覧 172
「本当の語彙力」を伸ばす! 反対語練習問題 174
必ず役立つ! 心情語一覧 176
必ず役立つ! 外来語変換表 177
おわりに すべては、子どもたちの輝かしい未来のために  178

 
おわりに

すべては、子どもたちの輝かしい未来のために――

 言葉は、数えきれないほど存在します。
 ほとんど無限にあると言ってもよいでしょう。
 語彙力を伸ばすための本を書こうとするとき、最初に立ちはだかる壁は、この「対象の無限性」です。
 国語辞典は、その無限性に真っ向勝負を挑んでいます。その意味では、語彙力を伸ばすための本として国語辞典にかなう存在はないと言えます。
 しかし、国語辞典にも弱点はあります。
 それは、言葉と言葉の間の「関係」が切れているということです。
 国語辞典においては通常、言葉は五十音順に並んでいるだけであり、隣り合う言葉の間には何の関係もありません。
 一方、私たちが日常の中で言葉を使うとき、そこには多くの場合、「関係」が生じています。
 その中でとりわけ大切なのは、「言葉Aと言葉Bは似ている」(共通点)、「言葉Aと言葉Bは異なる」(相違点)という関係性です。
 この関係性をつかむことを重視していけば、無限にも思える「対象」に切り込む余地があるのではないか。
 言葉と言葉の関係を見出すための「技術」「考え方」を紹介することができれば、ただひたすら1冊の国語辞典だけを頼りに言葉の海をさまよい、ときにおぼれてしまうような子どもたちを、助けることができるのではないか。
 そう考えたわけです。
 関係を見出すこと。それは、次のようにも表現できます。

 点で存在する言葉を、線にする。
 線になった言葉を、面にする。
 面になった言葉を、立体にする。

 そんなプロセスを実現するための一助として、この本がお役に立てれば幸いです。


 ところで、この本は私の19冊めの本です。
 この本も、多くの苦労を経て生まれました。
 当初は、「言葉」の領域を超えた「知識」の質を高めることがテーマでした。巨大なテーマでの執筆を、考えていたのです。
 2ヶ月かけて企画を詰めるうちに結局「言葉」に立ち返ることとなったわけですが、昨今の教育界における「知識軽視」の風潮をなんとかしたいという思いが、その背景にはありました。

「アクティブ・ラーニング」という言葉を、ご存じでしょうか。
 子どもどうしで〝能動的に〟学び合い、教え合う。
 一方で、教師は〝消極的に〟なる。できるだけ、教えない。
 昨今、これが「理想の学校教育の姿」とされつつあります(平成26年11月20日・中央教育審議会諮問などを参照)。「自主性尊重」を錦の御旗にして、正当化されようとしているのです。
 これは、大変危ない傾向です。
 このままでは、子どもたちの「知識」は、貧弱なものになってしまいます。
 教師は教えず、子どもが〝教える〟のですから、そうなるのは自明です。
 そんな中で、教師自身も専門性を磨かなくなっていきます。
 よいことなど、1つもありません。
 この本は、そんな時代の流れにあらがうべく生まれたわけです。

 なお、「言葉」について書くことが決まったあとも、2ヶ月かけて書いた100ページの原稿をすべて捨てて書き直すという決断を自ら下すなど、紆余曲折がありました。
 すべては、「読者にとっていかに役立つか」という基準で判断した結果です。
 私が「読者」と書くとき、その先には必ず「子ども」がいます。

 日本の、いや世界の未来を担う子どもたちが、言葉を自在に使いこなし、思考を磨き、活躍できるように――。

 そう願いながら、筆を置きたいと思います。


主 宰 福嶋隆史