福嶋隆史HP TOP


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━<隔週1回水曜日発行>━━

         》》》 小学校教育が危ない! 《《《

          No.65  2007/7/18

     著者:福嶋隆史 [ふくしま国語塾 主宰 (元小学校教師)]

      著者HP http://www16.ocn.ne.jp/~wildcard/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

No.65 それを子どもに決めさせてはいけない――それは教師が決めることだ

======================================================================
目次
◆はじめに……自主性信仰の弊害は、まだまだある
【1】……発表する子を、子どもが指名する?
【2】……「席替え」を子どもに決めさせる?
【3】……暴力を振るう子の問題を、クラスで話し合う?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆はじめに……自主性信仰の弊害は、まだまだある

 私がこのメルマガでイヤというほど書いてきた「自主性信仰の弊害」。
 半ば「書き切った」感があったけれども、ところがところが、まだあった。
 今日はその一部をご紹介する。
 それぞれの問題の解決策は、ズバリ、「子どもに決めさせず、教師が決める
べし」である。

 なお、自主性信仰については、第56号もご参照いただきたい。
http://www16.ocn.ne.jp/~wildcard/06-mysite-merumaga-abunai-bn-56.html

----------------------------------------------------------------------
【1】……発表する子を、子どもが指名する?

 授業中、教師が指名して発表させる場面がある。
 これは当然、問題ない。

 しかし、次のケースはどうか?

 教師が指名したAさんが、次のBさんを任意に選び、指名する。
 Bさんも、任意にCさんを選び、指名する。
 これが繰り返される。
 要するに、教師は最初しか指名しない。
 あとは子どもが子どもを指名する。

 この方法を採っている教師は、かなりの数にのぼるはずである。
 だが、この方法には問題がある。

 もうお分かりと思うが、「いじめの芽」を次々と生むことになるのだ。
 しかも、それを、授業という公的な場で認めてあげる結果となる。

(このあたりについては、第36号も参照していただきたい)
http://www16.ocn.ne.jp/~wildcard/06-mysite-merumaga-abunai-bn-36.html

 なぜ「子ども連鎖指名」が問題なのか?

 Aさんは、気に入っているBさんしか選ばない。
 Bさんは、気に入っているCさんしか選ばない。
 いじめの対象となっているZさんは、選ばれないまま授業が終わる。

 逆もある。
 求められている発表内容が答えにくいもの(難問)である場合などだ。
 いじめっ子のDさんは、わざとZさんを選ぶ。
 Zさんは、困惑する。答えられない。そして、あとから、からかわれる。

 このような結果を非常に生みやすい「子ども連鎖指名方式」は、避けるべき
なのである。
 私は、過去、一度も行ったことがない。
 原則として、指名のすべては、教師が行った。

 (ただし、「指名無し討論」などもたくさん実施した。
  これは、教師の指名が全く無い状態で自主的に起立して発言するものだ。
  複数の子が同時に起立したら、原則として、発言回数の少ない人に譲る。
  ただし、譲らなくてもいい。そこには、「主張の欲求」と「譲り合いの精
  神」がせめぎあい、子どもは葛藤する。しかし、それが子どもを成長させ
  る。また、発言の無い子には、まずノートに書かせ、その意見を音読させ
  ることで発表の場を与える。詳しくは省くが、この方法は、教師の介入の
  少ない指導方式としては有効である)

----------------------------------------------------------------------
【2】……「席替え」を子どもに決めさせる?

 これはまあ少ないだろうが、無いわけではない。

 たとえば、「お見合い方式」という決め方がある。
 手順はこうだ。

1…クラスの子どもたちを男女別に並ばせる。
  男子(あるいは女子)だけを外(廊下や別室)に移動させる。
  教室内をのぞかないように、と言っておく。
2…残った女子(あるいは男子)に、好きな席を選ばせる。
3…女子の席が決まったところで、男子を呼ぶ。女子は外へ移動させる。
  教室内をのぞかないように、と言っておく。
4…男子に、残った席を選ばせる。(女子の座席は伝えないで選ばせる)
5…4の終了後、教師の合図で、男女それぞれが、自分の決めた席に着く。

 この方法では、5で当然、子どもたちが一喜一憂する。
 一番問題なのは、「え〜!? 最悪。○○の隣なんて嫌だ…」という言葉を
発する子が必ず出ることだ。
 いや、言葉で言うならまだ可愛げがある。
 むしろ、無言で隣の○○さんをにらみつけたり、あからさまに不満げな表情
を浮かべたり、机を引き離したりする子が出るのは必至である。

 しかし、決まったことなので、教師はこんな風に言う。
「ほら! 文句言わないの! みんなで仲良くしなさい」

 こんなやり方でいじめが生まれない方がおかしい。
 これでは、低学年でもいじめが生まれてしまう。

 「お見合い方式」では、教師がよほど注意してルールを綿密に考え、それを
事前にクラス全員に周知しておかないと、トラブルが起こる。

 私も、「たまには違う方法で…」と思い、このお見合い方式による席替えを
年に1〜2回だけ行ったことがあるが、そのつど、「やっぱり自分で決めるべ
きだった」と後悔した。

 次のような綿密なルールを設定した上でやったのに、である。

 私は、以下をすべて、事前に子どもたちに話した上で、「お見合い形式」を
行った。
<ルール>
 ・視力や身長で配慮が必要な子を優先する。
 ・男女別に自分の場所を決める際、友達と希望が重なったら、奪い合いでは
  なくジャンケンで決める。
 ・3分以内に決める。
 ・自分の席が分かった直後、近くの子がどんなに嫌いな子でも、それを口に
  出したり、表情に出したりしてはいけない。嫌いな子がいるのは人間だか
  ら当然だが、だからといって、その感情を外に出さないこと。学校という
  のは、嫌いな人とも上手に関わりあう方法を学ぶ場でもあるのだから。そ
  れに、嫌いだと思っていた子が近くになって、意外と仲良くなれることに
  気がつくかもしれない。ある意味で、チャンスでもあるんだよ。
 ・もし、席が決まったあと、クラスの中でたった1人でも「え〜」などと文
  句をいった場合は、即座に席替えをやめ、すべて先生が決める方法に変え
  ます。

 そこまで話した上で、お見合い形式をとった。
 それでも、それでも、やはり教師が決めたほうがよかった、と思った。

 安定したクラスを作るのは、教師である。
 教師が、クラスの人間関係を考慮して席を決めるのが、最も適切なのだ。
 席替えを子どもに任せてはいけない。
 
----------------------------------------------------------------------
【3】……暴力を振るう子の問題を、クラスで話し合う?

 どのクラスにも、1人や2人、暴力的な児童がいる。
 
 それが単に喧嘩っ早いという程度ならよいが、「反抗挑戦性障害」などの表
れだったとすると、簡単にはことが運ばない。
 また、親から日常的に虐待を受けている子が、他の子に暴力を振るう場合も
ある。

 このような深刻な子どもの問題を教室内・学校内で解決できるのは、誰か?

 言わずもがな、教師以外に居ない。
 もちろん、保護者、学校カウンセラー、あるいは外部相談機関との連携も欠
かせないが、まず教師(校長も含む)だ。

 だが、あろうことか、これをクラスの学級会の議題で取り上げ、子どもたち
に話し合わせようとする教師がいる。

「みんなに暴力を振るう○○君との関係を、今後、クラスとしてどのように
 変えていけばいいだろうか。全員で、話し合いなさい」

 そう言い放ち、教師は黙って座り込む。
 1時間、2時間、3時間と、延々、子どもたちに話し合わせる。

 しかし、いくらやっても解決などしようはずもない。
 むしろ、子どものイライラは増大するばかり。
 しかも、その話し合いの場に、渦中の○○君もいるというのだ。

 ここぞとばかりに○○君を祭り上げ、暴力反対を訴える強気な子もいれば、
クラスの険悪な雰囲気に心を痛め、○○君を「可哀想」とまで思うような優し
い子もいる。

 どうであれ、いいことなどひとつもない。進展などありえない。

 これは実話なのだが、結局暴力は収まらず、むしろ増大したそうだ。
 もう少しで傷害事件にすらなりそうな状態だったと聞いた。

 「子どもの自主性を尊重している」という美辞麗句によりかかり、自己の職
務を放棄した教師の責任は、きわめて重大である。

----------------------------------------------------------------------
 以上、3つについて書いた。
 もちろん、最大の問題は、「授業内容を子ども任せにする」ことだが、これ
については今までたくさん書いてきたので、今回は省くことにする。

----------------------------------------------------------------------