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         》》》 小学校教育が危ない! 《《《

     No.57  2007/3/28  著者:福嶋隆史

      著者HP http://www16.ocn.ne.jp/~wildcard/
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     No.57 通知表なんて不要!――その5つの根拠

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【 目 次 】
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◆まえがき 《 評価と評定の違い 》
      《 絶対評価と相対評価の違い 》
      《 規準と基準の違い 》
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(1)通知表不要論 5つの根拠
   【1】評価の対象となる期間が長すぎる!
   【2】絶対評価の基準が無いのなら、評定してはいけない!
   【3】教師の力量によって、評定が限定されてしまう!
   【4】校長たちが、相変わらず相対評価にとらわれている!
   【5】教師の時間を奪いすぎる!
(2)通知表廃止のあとの、保護者への成績伝達方法
(3)それでも書くならば、どんな通知表を書くべきか?
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◆まえがき

 今回は専門用語が出てくる。
 先に、それを整理しておこう。ポイントは3つだ。
 既にご存知の方は、とばして先へどうぞ。

《 評価と評定の違い 》〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

評価……あなたは優秀。/立派です。/結構いいですね。→漠然としている。

評定……あなたはAです。/90%できました。/72点。 →数値で明確。
    (「評定は、評価の一形態である」と捉えることもできる)

《 絶対評価と相対評価の違い 》〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

絶対評価……他人と比べない。「目標ライン」と比べる。
      100点中、80点〜100点 は A
            50点〜 79点 は B
             0点〜 49点 は C として、
      クラス全員が80点以上なら、全員がAでよい。
      クラス全員が49点以下なら、全員がCになる。
      つまり、点数という基準によって絶対的に振り分ける評定方法。
      (点数の数値は一例)

相対評価……他人と比べる。
      クラス40人を得点順に並べたとき、
            上位10%( 4人程度)が A
            中位80%(32人程度)が B
            下位10%( 4人程度)が C として、
      たとえクラス最高点が49点でも、最高である限り、A。
      たとえクラス最低点が80点でも、最低である限り、C。
      つまり、 % という基準によって相対的に振り分ける評定方法。
      (%の数値は一例)

          いわゆる偏差値は、平均点からの距離を示す数値だから
          相対評価に当たる。(平均とは他人との比較である)

《 規準と基準の違い 》〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

評価規準……「3桁÷2桁の割り算の筆算の方法を理解し計算できる」など、
      学習内容を規定するもの。

評価基準……3桁÷2桁の割り算の筆算の問題が100問あったら、そのうち
      80問以上正解できる場合が A など、要するに先ほど「絶対
     評価」で書いた点数の基準に当たるもの。数値で測定できる基準。

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 さて、お分かりいただけただろうか。
(教師の皆さんには当然お分かりのはずだが)

 では、本論。

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(1)通知表不要論 5つの根拠

【1】評価の対象となる期間が長すぎる!――――――――――――――――

 子どもたちの登校日は、200日ほどにも及ぶ。
 3学期制なら、1学期あたりの授業日数はおよそ70日。350時間前後の
授業が行われる。
 それだけ長いスパンの中での学習成果を、ひとまとめにくくって評定しよう
とすること自体、無意味である。

 昨今、<前期・後期>の2期制を取り入れている自治体・学校も多い。
 そうなると、範囲はもっと広くなる。
 ざっと、100日をひとくくりにすることになる。

<4月から9月までの100日間の「算数」の「処理力」は B です>

 って言われたって、「だからどうすればいいの」という感じだ。
 もっと細かく評定しないと、意味がないのだ。
 せめて、「小数の割り算」はA、「分数」はB……ぐらいにしないと、も
らったほうも役立てることができない。

 現状ではせいぜい、A〜C(◎〜△)の個数に一喜一憂して終わりである。


【2】絶対評価の基準が無いのなら、評定してはいけない!――――――――

 あるのは、漠然とした規準だけ。
 規準は学習指導要領に書いてあるのだから、わざわざ作らなくていい。
 しかし、多くの教師は、この「評価規準」を作ることにばかり時間をかけ、
肝心の「評価基準」を作らない。

 「どこ」までできたらAなのか?
 その数値的な「目標ライン」を作っていない学校・教師が、非常に多い。

 早い話が、「全速力でがんばって走ればA」「だらだら走ってる子はC」と
いうような、感覚的評定がはびこっているわけだ。
 人間が人間を評定するという行為は、そんないい加減な行為であってはなら
ないのである。

「4年生は、50mを9秒5以内の速さで走れれば、走る技能がA」などとい
う綿密な基準を用意せずに感覚で評定するならば、それは教師の傲慢不遜とい
わざるを得ない。

 ただし、全科目全領域についてこの数値基準を用意するのは、至難の業だ。
 たとえば、図工や音楽だってA〜Cをつける。
 絵画、工作、歌唱等の数値基準を、自信を持って提示できる教師がどれだけ
いるだろうか?
 ほとんど、いないだろう。

 それなのに、通知表には堂々と、図工にも音楽にもA〜Cが書かれている。
 矛盾した行為だ。

 いや、そういう芸術的教科だけでなく、国語や算数でも同じだ。
 作文力にしても、数学的思考力にしても、いったい何を基準に判定している
のか、怪しいものである。(保護者は、教師にそれらの根拠の開示を求めたっ
ていいのだ)

 教師は、それらの根拠を示せないなら、評定してはいけない。
(ちなみに、私は主要教科の95%以上、その他の教科の85%以上におい
 て、ちゃんとした根拠を用意して、数値による評定を行っていた)


【3】教師の力量によって、評定が限定されてしまう!――――――――――

 教師の指導技能の高低によって、つまりクラスによって、評定が変化してし
まうということだ。

 現在、公立学校の評価方法は、文部科学省が打ち出しているように、すべて
基本的に「絶対評価」である。(中学校も同じ)
 そうすると、次のようなことが起こってくる。(名前は仮名)

 1組の川上先生が、子どもに「10」の力をつける優れた授業をして、
   ・子どもが9〜10の力をつければ、A
   ・7〜8の力をつければ、B
   ・6以下ならC

 2組の山下先生が、子どもに「8」の力しかつけられない授業をして、
   ・子どもが7〜8の力をつけても、B 止まり
   ・6以下ならC

 つまり、山下先生のクラスでは、いくらがんばってもAになれない。
 実際に、こういう「クラス間格差」は厳然として存在する。

 教師の力量によって成績が限定されるこのような問題を放置して、通知表を
いくらせっせと作ったって、意味が無いのである。
 通知表なんて書いている暇があったら、教師は授業技術を磨くべきだ。
 明日の授業の準備をすべきだ。


【4】校長たちが、相変わらず相対評価にとらわれている!――――――――

 これは実は相当に由々しき問題であり、訴えてもいいくらいのことだ。
 文部科学省が絶対評価を指示しているにも関わらず、年代の古い校長たちは
「7%がA」というような固定観念から抜け出せないでいる。

 自分で言うのもなんだが、私のような指導力の高い教師は、子どもたちが全
員Aになることも、結構ありうるのである。全員とまではいかなくても、かな
りの割合でAになる。
 実際、国語の市販テストを実施して、クラス平均点が96点だったこともあ
る。最高点が、じゃない。平均点が、である。

 そういう指導を毎日受けている子どもたちのクラスの「評定一覧表」には、
Aがズラッと並ぶ。
 しかし、それを見てこんなことを言う管理職がいるとしたら、どうだろう?

「Aが多すぎる。こんなに出来るはずがない」
「この地域の子達が、こんなに出来るはずがない」(差別的発言!)
「もっとCをつけよ」
「本来、Aなんていうのは、相当少ないものなのだ」

 このような発言が、許されるであろうか?
 いや、確かに、教師によっては、甘くつけすぎている教師もいる。
 さきほどの山下先生(仮名ですよ)タイプの教師が、Aを無理やりつける場
合もある。
 あるいは、評定をつける段になって、可愛い子どもたちの笑顔が思い浮かぶ
と、本当はBでも、ついAにしてあげたくなる。
 そういうことは、誰にだってある。

 それでも、相対評価の思想を引きずっている管理職の理不尽な指示を、許す
ことはできない。
 AはAなのである。根拠もちゃんとある。
 子どもたちの頑張りを無視するくだらない思想を、排除せよ。
 排除できないなら、通知表なんてやめよ。


【5】教師の時間を奪いすぎる!――――――――――――――――――――

 通知表不要論の究極的?理由は、これだ。
 要するに、教師の時間的負担が大きすぎるんだ。
 1人1人がもらう通知表の文章量を原稿用紙枚数に換算すれば、その大変さ
が分かるだろう。

 さきほども書いたが、そんな通知表を書くヒマがあったら、授業準備をせよ
と言いたい。
 通知表の時期になると、教師はもう、授業どころじゃなくなるのだ。
 「通知表どこまで進んだ?」「あと16人です」「16? 大変だね」
……なんてのが、教師同士の挨拶がわりになる。

 学期末、学年末というのは、いろいろな意味で重要な時期だ。
 それなのに、その時期の大切な授業をほったらかしにして、役にも立たぬ通
知表をカリカリと書きまくる。
 呆れる現状だ。

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(2)通知表廃止のあとの、保護者への成績伝達方法

 それは、日ごろのテストの結果や、授業中の即時評定の結果などを、細かく
具体的に伝えていくことで解決できる。
 いや、いちいち紙に書いて渡せ、と言っているのではない。
 それでは通知表と同じになってしまう。

 個人面談で伝えればいいのだ。
 私は、いつもそうしていた。

 ……この授業の、この学習の中で、Aの評定を与えました。○○さんは、こ
   れこれこういう力を身につけました。立派ですね。
 ……この授業の、この場面では、○○くんは、悩んでいました。こういうと
   ころが、苦手なんだと思います。ですから、これこれこういった勉強方
   法を、取り入れてみてください。

 面談の際には、ノート、テスト、作品、ビデオなどの具体物を、必ず用意し
てから、話をすすめた。

 こういうことの積み重ねがあれば、通知表のもつ「保護者への通知」という
役割は、立派に果たせる。

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(3)それでも書くならば、どんな通知表を書くべきか?

 それでも、「大人になってから子ども時代を振り返る“よすが”として、通
知表は作るべき」などと言う意見もあろう。

 では、よい通知表とはどんなものか?

 それは、文字が丁寧な通知表か? いや、違う。
 たくさん文章が書いてある通知表か? いやいや、違う。

 よい通知表の条件は2つだ。

<1> 文章が具体的で、数値が入っているもの
<2> 読んで、個人が特定できるもの

 教師は、特に2を基準にして、通知表を読み直すといい。
 クラス30人なら、30枚全部の通知表を、ランダムに並べ替え、名前を伏
せて読んでみる。
 1枚1枚、「あ、これは○○さんの通知表だ」と分かるだろうか?
 隣のクラスの先生に読んでもらっても分かるようなら、カンペキだ。

 私は、この2点を常に念頭に置いて、通知表を書いてきた。

 「意欲的」「がんばり」「積極的」「やる気」「まじめ」「丁寧に」などと
いうありふれた言葉だけを書き連ね、Aさんの通知表なのか、Bさんの通知表
なのか区別できないような通知表は、私は一度も書いたことがない。


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