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         》》》 小学校教育が危ない! 《《《

     No.55  2007/3/14  著者:福嶋隆史

      著者HP http://www16.ocn.ne.jp/~wildcard/

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 No.55 子どものイライラを増幅させる、これだけの理不尽[その2]

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【 目 次 】
◆「神は細部に宿る」
(1)「挙手指名」を多用することで「指名する子」に偏りが出ていないか?
(2)行列で引率するとき、いつも背の小さい子が前になっていないか?
(3)テストを回収するとき、後ろの席から前に送らせていないか?
(4)平気で約束を破っていないか?
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◆「神は細部に宿る」

 プロは、細部に気を使う。
 建築家、画家、漫画家、作曲家、小説家、大工、美容師、医師、教師。
 誰もが、「それでこそプロ」といえる「細部の思想」を持っている。

 これから書くのは、どれも小さなことだ。
 だが、その小さなことこそが、重要なのだ。

 しかも、子どもというのは、【小さなことにこだわる生き物】である。
 多くの子は、小さな「不公平感」を胸に秘め、イライラを溜めていく。
 そういう子どもの感情に配慮できない教師を、プロとは呼べない。
 そういう細部に目が向かない教師を、プロとは呼べない。

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(1)「挙手指名」を多用することで「指名する子」に偏りが出ていないか?

「先生は、いつも○○さんばっかり当てて、私を指してくれない!」

 子どもからこういう言葉が出る場合、状況は2通りある。
 1つは、本当は公平に指名されているのに、その子が単にわがままを言って
いる場合。
 もう1つは、教師が実際に不公平な指名をしている場合。

 前者はここでは扱わない。
 問題は後者だ。

 もちろん、教師にはそういう意図はない。
 わざと○○さんばかり当てよう、なんて思ってはいない。
 そこまでひどい教師は少ない。
 しかし、結果的に○○さんばかりになっている。
 では、なぜそうなってしまうのか?

 それは、いつもいつも「挙手指名」の方法しか使わないからだ。
「この問題が分かる人、手を挙げて?」
「はい、はい、はい、はい!!!」
 このやり方だと、子どもに不満が残って当然である。
 大多数の子は、当ててもらえないのだから。

 私は、「挙手指名」はほとんど使ったことがない。
 たいていは、「列指名」と「ランダム指名」の方法を採っていた。

 列指名は、列ごとに前から順に当てていく方法。
 ただしこれも、「前から」ばかりでは不公平だ。
 そこで、後ろから当てたり、真ん中から当てたり、いろいろ気を使った。
 列も、縦列だけでなく、横列でも当てた。
 他にも、班ごとに当てたり、男女交互に当てたりした。

 ランダム指名は、名札カードをシャッフルして、順次当てていく方法。
 子どもの目の前で「シャッフル」「抽選」が行われるので、不公平感がまっ
たくない。しかも、ランダムに発言の場が回ってくるので、子どもは気を抜け
ない。必然的に、集中力も上がる。

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 ところで、《発言回数》を「シール」などでチェックし、「積極性」を計測
しようとしている教師は、いないだろうか。

 ある保護者から聞いた話。
 上記のような「不公平な指名方法」のために「発言したくてもできないこと
がある」にも関わらず、うちの子は発言回数をシールでチェックされている。
そのことに、子どもは不満を漏らしている……と。

 そもそも、だ。
 積極性を《発言回数》で計るという方法には、問題がある。
 だって、挙手や発言は少ないが、ノートや教科書に向かい合って「じーっ」
と黙って考えている子だって、十分に積極性があるではないか。むしろ、気安
く挙手してどうでもいい発言を繰り返す子よりも、真剣に授業に取り組んでい
ると言えるかもしれない。
 また、恥ずかしくて挙手できない子のノートを見ると、実は、質の高い解答
や意見が書かれていたりすることもある。そういう子だって、積極的に授業に
参加していると言える。

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 ちなみに、最初の話だが、挙手指名にもやり方がある。
 大勢の子がいっぺんに手を挙げたときは、私ならこうする。
「おお、すばらしいですね、こんなに分かるんですか。
 じゃあ、せーので言ってね、せ〜の!」
 こうすれば、全員が答えられる。全員、すっきりする。
 私は、こんなふうに盛り上げるときくらいしか、挙手指名を使わなかった。

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(2)行列を引率するとき、いつも背の小さい子が前になっていないか?

 子どもたちを2列に並ばせ、移動する――教師は、毎日のようにこれを行っ
ている。
 しかし、いつもいつも、背の小さい子が先頭になっていないか?
 口に出さなくても、子どもはこういうところに不公平感を秘めているのだ。
 高学年でも同じである。

 私は、時には後ろから、時には真ん中から(真ん中の子たちを先頭に並ばせ
て)引率した。
 こういう細かな配慮があることで、子どもたちは、教師を信頼するようにな
るのである。

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(3)テストを回収するとき、後ろの席から前に送らせていないか?

 こんなことをする教師が現実にいるのか、と耳を疑った。
 最近、ある子から聞いた話なのだが。

 普通のプリントなら分かる。
 しかし、テストである。
 解き終わったテストを、後ろの子から順番に、前に送らせているというので
ある。

 前の方に座っている子は、当然、後ろの子の解答用紙をのぞき見ることがで
きる。
 ミスした問題もあるだろう。
 空欄のままになっている問題もあるだろう。
 そういうものを他の子に見られることが、子どもにとってどれだけ屈辱か。

 教師は、テストをそんな方法で回収してはいけないのである。
 私は必ず、1人1人、教師の手元へ持ってこさせた。(1列に並んで、流れ
るように持ってこさせた)

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 ちなみに、この回収方法には大きな利点がある。
 答案が手元に重ねられていく時点で、大事な問題をちゃんと正解できている
かどうかを一瞬で把握できる、という点だ。

 もし、大事な問題を間違えている子が多いようならば、教師の指導に問題が
あったということだ。
 でも、テストを集めたその場で気づけば、直後に教えることができる。
「今の5番、できなかった子が多かったようです。まだ時間が5分ありますか
 ら、教科書の○ページを開いてごらんなさい。ほら、ここに書いてある方法
 で解くのです」
 子どもたちも、今解いたばかりだから、「そっか〜、そうだったよね」と理
解が深まり、身につきやすい。
 これが、何日か経ってからになると、理解度が落ちるのは当然である。

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(4)平気で約束を破っていないか?

 私は、めったに子どもと約束をしなかった。
 いや、約束をしなかったというより、「いつも約束に条件をつけていた」と
いう言い方が正しい。

「今度の体育で、5分だけドッヂボールをしよう」
と約束するとする。
 私なら、こう付け加える。
「あ、でも、その前に怪我人が出るとか、跳び箱で時間が足りなくなるとか、
 そういう場合には、できないこともありますから、そのつもりで」

「今度、そのビデオを見せてあげましょう」
と約束するときも、
「あ、でも、何かの事情でビデオを持って来られないかもしれませんからね、
 期待は8割程度にしておきなさい」
などと言っておく。

 こういうやり方は、「いい加減」なのでも「ずるい」のでもない。
 子どもと「絶対の約束」をしてしまって、もし果たせなかったら、「裏切り
者」になってしまう。クラスの子ども集団からの信頼を、失うことになる。
 それを未然に防いでいるだけのことだ。

 ところが、平気で「絶対の約束」をしてしまう教師がいる。
 そして、平気でその約束を破り、“大人の事情なんだからつべこべ言うな”
みたいなことを言いながら、不満を漏らす子どもを叱りつける教師もいる。
 言うまでもなく、悪いのは教師だ。

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 ちなみに、「期待は8割程度にしておきなさい」と言っておいて、ちゃんと
ビデオを持ってくれば、「あ、やっぱり先生は約束守ってくれたんだ」という
感情が生まれる。「絶対持ってくる」と約束したとき以上に、信頼感が生まれ
る。
 不思議なものだ。

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 終わりに、再度書く。

 「神は細部に宿る」
 「プロは、細部に気を使う」

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