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》》》 小学校教育が危ない! 《《《
No.53 2007/2/28 著者:福嶋隆史
著者HP http://www16.ocn.ne.jp/~wildcard/
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No.53 危ない授業の見分け方(全6回の6回目)
チェックリスト[4]こういう「内容」の授業は危ない!(後半)
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【
発行記録
】
チェックリスト[1]“教師の様子”で判断する「授業の危険度」
前 半 ←48号
後 半 ←49号
チェックリスト[2]“子どもの様子”で判断する「授業の危険度」←50号
チェックリスト[3]こういう「形式」の授業は危ない! ←51号
チェックリスト[4]こういう「内容」の授業は危ない!
前 半 ←52号
後 半 ←今 号
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【
目 次
】
◇まえがき
◆項目18◆ 「ルール説明や班分け」に時間を奪われ、運動量が減っていない
か?[体育]
◆項目19◆ 目的不明の「ふれ合い」だけの総合学習になっていないか?[総
合的な学習]
◆項目20◆ 高学年に対し低中学年と同じような地域学習ばかりさせていない
か?[総合]
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◇まえがき
今回は、「危ない授業の見分け方」特集の最終回。
【危ない授業】とは何か?
それは、
・子どもに学力がつかない授業
・出来る子は飽きてしまい、出来ない子は一層出来なくなる授業
・子どもが「楽しくない」と感じる授業
・子どもがどんどん「勉強嫌い」になる授業
・学校に行くのがつまらなくなる授業
・学級崩壊の火種となる授業
・いじめが生まれる素地となる授業
である。
「点数表示」はあくまでも目安であるが、教師のみなさんには、自己採点の材
料として、あるいは研究授業を見るための基準として、活用していただきた
い。また、保護者の方にも、授業参観時に授業の良し悪しを判断する材料とし
て、使っていただけるものと思う。
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チェックリスト[4]こういう「内容」の授業は危ない!(後半)
◆項目18◆------------------------------------------------------------
「ルール説明や班分け」に時間を奪われ、運動量が減っていないか?[体育]
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私も、教育実習生のときは、そうだった。
気がついたら、ルール説明や班分けのために、15分以上費やしていた。
子どもたちは、体操着のままで校庭のど真ん中に座らされ、じっとしていた
だけだった。
私1人が、熱心に、あれこれと説明を続けていた。
「体育」の授業だというのに!
終わったあと、実習校の体育主任に言われた一言がこれだった。
「内容はともかくとして、説明が長すぎるね」
……いや、分かっていたんだ。
「説明が長いのはご法度、子どもたちの運動量を確保せよ――」
これは、もう、どの教師だって知っている。体育指導の鉄則だ。
実習生の私だって、知っていた。
しかし、知っているのと出来るのとは全然違う。
ただし、私は、1年目から「出来る」ようになった。
つまり、初任者のときだ。
ある晴れた日の2時間目、3年生を相手に校庭で「ベースボール型ゲーム」
の授業をしていたら、その学校の体育主任が、校庭の片隅で、いつのまにか私
の授業をじっと見ていた。
いつも初任者の私に手厳しいことを言う先生だったので、ちょっとハラハラ
しつつ授業を進めた。
しかし、その授業後の中休み。
職員室に体育倉庫のカギを戻しに来た私に、彼は意外なことを言った。
「今の授業、すごいね。区の体育研究会で、研究授業として発表してもいいく
らいだよ」
今でも時々思い出す、嬉しい言葉だった。
体育とて、1回の時間は、他の教科と同じ45分。
ましてや、体育の授業というのは、教室と体育館(校庭)との行き来の時間
が、本来の授業時間に食い込むこともある。
加えて「安全のための注意」などをしていたら、肝心の「運動」時間が20
分しかなくなっていた――そんな経験は、すべての教師が持っているはずだ。
それを避けるには……
1━━ルール説明は教室で済ませておく(時間数「3分の1」を体育で計上)
2━━チーム分けは教師が行い、事前に発表しておく
(教師が行うことで、運動能力に差の少ない、能力の均等なチームができ
る。それによって試合も接戦となり、盛り上がる)
3━━集合時にいちいち整列させない
4━━様々な合図を作っておき、教師の言葉を極力減らす
(たとえば、タンバリンを振ったら集合、笛を吹いたら動作をやめて座る
などなど)
5━━授業そのものを、システム化する
最重要なのは、実は1や2ではない。5である。
私は、これを学ぶために、何度も何度も体育授業指導法セミナーに行き、汗
を流した。
後に、バスケットボール型ゲームのシステム化について、県規模の教師向け
セミナー(参加教師数100人以上)で発表したこともあった。
システム化とは、自動化のこと。
教師が何も言わずとも、子どもたちがどんどん動くようになること。
詳しくは、またいずれ。
<チェック基準>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
マイナス1点……ルール説明や班分けに奪われている時間が、45分中
6〜 8分
マイナス2点……ルール説明や班分けに奪われている時間が、45分中
9〜11分
マイナス3点……ルール説明や班分けに奪われている時間が、45分中12〜14分
マイナス4点……ルール説明や班分けに奪われている時間が、45分中15〜17分
マイナス5点……ルール説明や班分けに奪われている時間が、45分中18分以上
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◆項目19◆------------------------------------------------------------
目的不明の「ふれ合い」だけの総合学習になっていないか?[総合的な学習]
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「交流」「ふれ合い」だけで終わってしまう「総合的な学習の時間(通称:
総合学習)」を、頻繁に見かける。
他の学年との交流、他の小学校との交流、中学・高校など他校種との交流、
保育園児・幼稚園児などとの交流、そして、地域のお年寄りとの交流。
むろん、交流することそれ自体は、いいことだ。
人とのふれ合いも、そりゃあ、大事だ。
しかし、国語や算数の授業時間数を大幅に削って生み出した「総合学習の時
間」にわざわざやるべきことじゃない!
ほとんど「お遊び」で終わってしまうのは、目に見えているのだから。
「子どもにどんな能力を身につけさせるのか」という観点が無いから「お遊
び」授業になってしまうのである。
小学校学習指導要領の総合学習の項目に、指導のねらいとして「資質や能力
を育てること」と書かれているように、総合とて、他教科と同様、「何らかの
能力を身につけさせる」という【目的】があるのだ。
私が行ってきた「総合」の授業は、常にそれが明確だった。
環境サイクル図の授業、著作権の授業、討論の授業、パソコンの授業、食品
添加物の授業、タバコの授業、などなど。すべての授業で、明確に「こんな力
を身につけさせたい」という目標があった。
1回1回の授業の後、「子どもたちは確実に成長した」という手ごたえが、
常にあった。(詳しく書くと長くなるのでここでは省くが)
とにかく。
「その総合の授業を通して、子どものどんな能力を伸ばしたと言えるのか?」
これが曖昧な授業は、危ない。
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|*
ちなみに、先ほどの指導要領の記述の話だが。
|「資質」という言葉は、妙だ。
|「資質」の辞書的意味は「生まれつきの性質(素質・天性)や才能」。
| 指導によって「天性」を育てる、なんて、変な話だ。
| ここでは、「才能」だけを意味していると理解していい。
<チェック基準>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
マイナス1点……目的不明の「ふれ合い」活動が授業時間の20%を占める。
マイナス2点……目的不明の「ふれ合い」活動が授業時間の40%を占める。
マイナス3点……目的不明の「ふれ合い」活動が授業時間の60%を占める。
マイナス4点……目的不明の「ふれ合い」活動が授業時間の80%を占める。
マイナス5点……目的不明の「ふれ合い」活動しかしていない。
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◆項目20◆------------------------------------------------------------
高学年に対し低中学年と同じような地域学習ばかりさせていないか?[総合]
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●低学年は、生活科で「まち」を歩く。
(生活科とは、社会と理科が融合した教科。平成元年に新設された)
●中学年(特に3年生)は、社会科で「まちたんけん」をする。
ともに、身近な地域社会について調べたり、考えたりする活動である。
●しかし、高学年には、そのような学習単元はほとんど無い。(指導要領に定
められていない)
なぜだろうか?
それは、社会科の学習内容が、学年の段階に応じて徐々に視野を広げていけ
るように構成されているからだ。
つまり、
1〜2年の生活科と3年生は、身近な「まち」。
3年生の終わりから4年生にかけては、「市や県」。
5年生は、「日本」特に地理(横の広がり)。
6年生は、「日本」特に歴史(縦の広がり)。
だんだんと、範囲が広がっていく。
(上記以外にも産業や行政の仕組み等様々なことを学ぶが、今は置いておく)
要するに、高学年の子たちは、国レベルでの思考を求められているわけだ。
これは、社会科に留まらない。
国語の教科書に載っている文章にしても、国規模、世界規模の内容を扱った
文章が増えていくのが、高学年だ。
それなのに、高学年の総合学習の中で、まるで低中学年のような「地域学
習」をさせている教師がいる。学年ぐるみ、学校ぐるみでやっているところも
ある。
高学年の総合学習では、もっとグローバルな課題を扱うべきだ。
地球環境問題。エネルギー問題。情報化された世界の情勢。平和と戦争。
扱うべきことは、山ほどある。
それなのに、「地域」から抜け出せないでいるのは、教師自身にグローバル
な観点が無いからにほかならない。
今回のチェック基準は、「1回の授業の中」で判断できるものではないが、
重要なことなので、あえて示しておく。
(なお、5年生ならば比率の数字を少し「地域」に傾けてもいいだろう)
<チェック基準>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
マイナス1点……6年生の学習内容のうち「地域」と「地球」の比率が3:7
マイナス2点……6年生の学習内容のうち「地域」と「地球」の比率が4:6
マイナス3点……6年生の学習内容のうち「地域」と「地球」の比率が5:5
マイナス4点……6年生の学習内容のうち「地域」と「地球」の比率が6:4
マイナス5点……6年生の学習内容のうち「地域」と「地球」の比率が7:3
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今回の特集は、書くのにかなりの時間を要した。
授業を数値で評定するための基準を20個作る、という無謀な?計画を立て
てしまったがために、何度も書き直しながら書いたのが、実状であった。
しかし、苦労した甲斐あって、なかなか面白いチェックシートができた。
教師の皆さんは、ためしに採点してみたことと思うが、何点だったろうか。
まあ、点数は、正直なところ「おまけ」である。
ひとつでもふたつでも、役立つ文章があって、それを子どもに還元してもら
えるのなら、これ以上の喜びはない。
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