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         》》》 小学校教育が危ない! 《《《

     No.41  2007/1/3  著者:福嶋隆史

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 No.41 ~ メディアの情報は、常に中立的に検証すべきである ~

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 今日はまだ、正月三が日。

 正月くらい、「休刊」にしようかな……

 …と思ったが、前号で休刊を予告していなかったので、気が引ける。
 かといって、いつものように重厚な文章を書いても、お読みいただくのに時
間と気力が要るだろうし……

 そこで今回は、福嶋のHPからの引用にとどめることとする。

 実は、メルマガからHPへのリンクをクリックし、各ページを細かにお読み
いただいている方は意外と少ないのが現状であり、「HPからの引用もあなが
ち無駄ではない」と判断した。
(ただし、そのままの引用ではなく、かなりの加筆修正を行っている)

(なお、「教師の多忙」についての続編は、また別の回で書く予定)

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 昨今、多くのメディアで、教育に関する報道がなされている。
 日本の教育を憂えたくなるような内容がほとんどである。

 だが、それらの報道内容のすべてが、事実を過不足なく適確に伝えていると
は限らない。中には、誤解を生みやすい表現を含む報道もある。

 たとえば、「学力低下」を訴える報道。
 これらは、常に十分なデータ分析をもとにして論じられているとは、限らな
い。
 「学力低下!」と訴えれば、それだけで多くの読者・視聴者が共感してくれ
るようになってしまった昨今。
 そういう世論に媚びる報道が出てきても、不思議はない。
 だからこそ、慎重に、中立的な視点でデータを読み解く必要が出てくる。

 今回は、この点について、福嶋独自の視点で検証する。
 06年9月に多くのメディアで報じられた、とあるニュースが題材だ。

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 そのニュースは、こうだ。

【06年9月2日】[小中学生 計算よりも文章題が苦手]〔読売新聞、ほか〕

 文部科学省所管の「総合初等教育研究所」が9月1日に発表した、
「『計算の力』の習得に関する調査」の結果が出たという。
 そこには「文章題からの立式が苦手」という傾向が見られた(らしい)。
(「文章題からの立式が苦手」という解釈は、記事からの引用)

 まあ、お決まりの内容だ。
 つまり、
「今の子には“考える力”がない!」
「計算力はあっても、思考力の問題ができない!」
……という主張。

 まあ私も、「いや、思考力はある!」と強く反抗するつもりはないが、こ
のお決まりの記事には、なんだか胡散臭さを感じずにはいられなかった。

 なにしろ、「傾向が見られた」というのは、あくまでも誰かの「意見」で
あり、「事実」とは異なるからである。

 以下の記事を読んだとき、その疑念はさらに増した。

 ========(ここから、記事の引用)===============================

「0.6メートルの青いテープと、1.5メートルの赤いテープがあります。
 青いテープの長さは、赤いテープの長さの何倍でしょう」
 …という問題の正答率は、小学5年で47.1%。
 計算式を作ることができたのも51.2%にすぎなかった。

「6リットルは、何リットルの1.2倍か」という問題では、
「6×1.2」「1.2×6」「6÷1.2」「1.2÷6」
の四つの選択肢から解答を選ぶのにもかかわらず、正答の「6÷1.2」
を選んだのは、小5で50.3%。中学生でも65.4%にとどまった。

 ========(記事からの引用はここまで)===========================

 これを読むと、確かに正答率の低さが目に付く。

 しかし、気をつけなければならない。
 こういうデータをもとに「学力」を論じるときは、【正答】のみではなく、
【誤答】についても検証すべきなのだ。

 一般に、算数・数学の誤答というのは、いくつかの種類に分類できる。

━━━<不正解のパターン>━━━━━━━━━━━━━━
(1)なにもやっていない(白紙)
(2)誤答(論理的思考力不足による立式(解法)の間違い)
(3)誤答(計算処理能力不足による計算の間違い)
(4)誤答(不注意による立式(解法)の間違い)
(5)誤答(不注意による計算の間違い)
(6)誤答(上記が組み合わさった間違い)
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 先ほどの問題例(最初の問題)で示すと、次のようになる。

 ちなみに正解は、
  ……(式)0.6÷1.5=0.4 (答)0.4倍 である。

(2)誤答(論理的思考力不足による立式(解法)の間違い)
  ……0.6×1.5  1.5-0.6 など。

(3)誤答(計算処理能力不足による計算の間違い)
  ……0.6÷1.5=0.5 など。(完全な計算ミス)

(4)誤答(不注意による立式(解法)の間違い)
  ……1.5÷0.6

(5)誤答(不注意による計算の間違い)
  ……0.6÷1.5=4 など。(位取りを間違えている)

 この問題で一番多かった誤答は、(4)であったに違いない。
 おそらく、誤答の大半は、これだったはずである。
 そのほとんどは、「“何倍”という言葉につられて、うっかり、大きいほう
を小さいほうで割ってしまった」ケースだと思う。
 誤答だった子に対し、「青」と「赤」の言葉の順序を強調した上で再度やら
せれば、最初に誤答した子の多くが、正しく立式できるはずだ。

 つまり、多くの子は本当は出来るはずだったのに、うっかり間違ってしまっ
たのだ。

 本当はできるはずなのに、このようなミスをする子どもがいかに多いか。
 私は経験上よく知っている。
 現役教師の皆さんにも、納得していただけることと思う。

 そんな「うっかりミス」を取り上げて、「小中学生の文章題を解く能力が下
がっている」と報道することには、慎重でなければならないはずだ。
 少なくとも、不正解パターンの(1)~(6)がどのような比率だったのか
を示した上でなければ、記事としての信憑性が薄れるというものだ。

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 なお、これは記事というより出題者の問題なのだが、
 例示されているうちの2問目は、なんだかひねくれた出題形式である。
「6リットルは、何リットルの1.2倍か」
 こんな日本語の使い方、あるだろうか?

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 メディアは、「正答率50%以下」なんていうデータにすぐ飛びつく。
 メディアというのは、どうしても世論に媚びるものだ。
 学力低下を訴えることは、もはやお決まりの手段。
 とりあえず「学力低下」と書いておけば、読者は食いついてくる。
 私は、今回の記事に、そんな“甘え”を感じた。

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 おまけに、このような“お決まり”の「思考力不足」の記事は、日本中の
「問題解決型算数授業」をやっている愚かな教師たちを、また図に乗せてしま
う結果となる。

 よくないことだ。

(問題解決型算数授業については、下記バックナンバーを参照)
http://www16.ocn.ne.jp/~wildcard/06-mysite-merumaga-abunai-bn-8.html

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