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》》》 小学校教育が危ない! 《《《
No.39 2006/12/20 著者:福嶋隆史
著者HP http://www.yokohama-kokugo.jp
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No.39 〜 教師の「多忙」
その実態[2]〜
「マニュアル」が無いから、効率が悪くなる
No.38 No.39 No.40
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教師が多忙だと、何が失われるのか?
第1に、授業準備や、教材研究・指導法研究等のために必要な「時間」。
第2に、精神的余裕。特に、子どもと関わるときの「気持ちの余裕」。
教師にとっては、両方とも大切だ。
いかに多忙を解決し、この2つを確保するか。
あなどれない、大きな問題である。
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多忙を生む原因は、大きく分けて2つ。
第1に、仕事そのものが多すぎること。
第2に、教師たちの能率が悪いこと。
第1の原因については、前号で触れた。次号以降でも書く。
今号では、第2の原因について述べる。
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8割以上の教師は、仕事の効率が悪い。
その効率の悪さを生んでいる要因は、2つある。
内的要因と、外的要因。
内的要因は、その本人の仕事能力の低さ。
外的要因は、システムの不備。
内的要因について語るのは、あまり意味が無い。
まあ、そういう人間を採用した教育委員会の問題だ、というほかはない。
つまり、採用試験の質の問題だ(第11号参照(【小冊子】に掲載))。
だから、ここでは触れない。
問題は、外的要因だ。
システムとは何か。
それは、「自動化」である。
「マニュアル化」と言ってもいい。
概して、学校の仕事にはマニュアルが無さすぎる。
ほとんどの仕事の「やり方」は、マニュアル化されていない。
それは、一部のベテラン教師の“頭の中”に留まっており、他の教師が共有
できない。
その教師が不在のときには、その仕事が進まない。つまり、他の教師が分担
できない。
要するに、多くの仕事は、○○先生に「一点集中」してしまう。
その教師が異動してしまったら、次年度には、別の教師の“頭の中”のマニ
ュアルにしたがって仕事が進められていくことになる。
要するに、多くの仕事は、いちいち「初期化」してしまう。
この、マニュアルが無いことによる「一点集中」と「初期化」こそ、学校と
いう職場の仕事効率を下げている、最大のシステム不備だと私は思う。
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たとえば、校務分掌の「体育主任」。
体育主任は大変だ。やることが多い。
たいていは、ベテラン教師が充てられる。
それは、多くの仕事が「頭に入っている」からだ。
しかし、この“頭の中”の仕事を文書にしておけば、別にベテラン教師が担
当しなくても、仕事は成り立つ。
マニュアル化を進め、もっと仕事をうまく分担しなければ。
分担すれば、仕事が早く終わる。
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まず、分掌ごとの「年間の仕事一覧表」が必要だ。
これが、最初に作るべきマニュアルだ。
「何月までに、どんな仕事をする必要があるか」――これを一覧にした紙。
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多くの学校には、たったこれすらも、ないのである。
(いや、「学校経営計画」の中に、仕事内容の分担表があるにはあるが、
「何月までに」が書いてない。これでは、役に立たない。ある程度詳し
く書いてなければ、使えないのだ)
そんな一覧表、あって当たり前――そうお思いになるだろう。
が、学校とはこのような非常識がまかり通る職場なのである。
たとえば体育主任ならば、下記のような仕事が必要になる。
これらを、一覧にしておくべきだ。
(以下はあくまでも一例)
一覧にしておくことによって、分担が可能になる。
また、次年度の教師がそれを見て仕事をできるから、初期化を避けられる。
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【水泳指導の準備】……水泳授業開始は6月下旬から。
そこで、4月下旬までには、
水泳の指導体制や特別時間割についての提案を職員会議に提出。
また、次のような仕事も必要になる。
・水着、帽子への記名や帽子の色のルール、水泳カードのルールの確認。
・水温、気温による実施の可否判断のルールの確認。
・水質を維持する循環機の操作講習会、救急救命法講習会などを手配。
・プール清掃の期日や分担。
・コースロープ、ヘルパー、その他備品の確認。
・購入すべき備品の手配。
時期は少しずれるが、次のような仕事もある。
・夏休みに実施される、区レベルでの水泳大会のエントリー児童の決定。
・大会打ち合わせのために他の小学校での会議に参加。
【運動会の準備】
運動会を10月に実施するならば、6〜7月には職員会議に概要を提案。
そして夏休みが明け、9月に入ったら、もう運動会一色。
(運動会という一大イベントは、水泳以上に、あらゆる仕事が発生する。ここ
には書ききれないので省略するが、まさに、てんてこ舞いになる)
【球技大会、体育大会】
秋には、区や市が主催する球技大会、体育大会も待っている。
これも、かなりの仕事量になる。
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これらは、体育主任が1人でこなせる仕事ではない。
体育主任だって、そもそも、ひとつのクラスの担任なのだから。
それに、○○主任は、他の□□主任もたくさん兼務していることが多い。
マニュアルに沿って、手際よく分担して進めなければ、終わらない。
体育だけではない。
他の各教科も同じ。事務分掌も同じ。
その他の校務も、すべて同じだ。
仕事を分担し1人1人の仕事量を軽減するため、そして、仕事内容を次年度
に引き継ぐためには、「仕事内容の文書化」が、極めて大切なのである。
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ちなみに、マニュアル作りは、手書きではダメだ。
データ化しなければならない。
データとして残せば、あとから手直しができる。
これは、学校で扱われるすべての文書について言えることである。
しかし、学校にはまだ、データ化が根付いていない。
まだまだ、「手書きしかできません」という教師がいる。
困ったものだ。
一方、たとえデータがあっても、データがどこに保存してあるかわからない
状態になっていることも多い。
次年度に引き継いでいくという意識がないから、そうなるのだ。
データを探しても見つからないと、他校に異動した去年までの担当教師にわ
ざわざ電話して、「ねえ、あの文書のデータ、どこにあるか知らない?」なん
てやっている教師も、たくさんいる。
効率の悪さを如実に示す話だ。
多くの教師は、野口悠紀雄氏の『「超」整理法』などを読んだ方がいい。
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