━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

         》》》 小学校教育が危ない! 《《《

    No.38  2006/12/13  著者:福嶋隆史

      著者HP http://www.yokohama-kokugo.jp

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    No.38 〜 教師の「多忙」 その実態 [1:序論]〜

         No.38 No.39 No.40

======================================================================

もくじ
(1)メディアは、現場の事実を伝えきれていない
(2)「学級の仕事」と「学校の仕事」――どちらが優先されるべきか?
(3)1日13時間の仕事のうち、「学級の仕事」に何時間充てられるのか?

----------------------------------------------------------------------
(1)メディアは、現場の事実を伝えきれていない

 今、メディアのあちこちで、「教師の多忙さ」が伝えられている。

 たとえば12日にも、こんな記事があった。(情報源:毎日新聞)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061212-00000002-mai-soci
「教師は会社員以上に多忙感を持っている」という調査結果が出たという。

       (満足感も得ている、とあるが、これは多忙感ゆえの“まやか
        し”だろう。内実のともなう満足は少ないはずだ)

 各種メディアは、このような大規模な調査による総体的な「データ」や、教
師個々人のバラバラな「感想」は報じるけれど、現場の「実態」を詳しく報じ
てはいない。
 「データ」も「感想」も大事だが、一番重要なのは「現場の事実」である。

 しかし多くの人は、その具体的事実をあまりよく知らない。
 だから、その「多忙さ」に疑念を抱く人もいる。

 本当に忙しいの?
 だって公務員でしょ?
 5時過ぎれば帰っていいんでしょ?
 夏休みもたくさん取れるんでしょ?
 授業以外の雑用が多いっていうけど、雑用って何なの? 雑用も仕事なんだ
から、やるのが当たり前でしょ? そんなの多忙のうちに入らないでしょ?

 ……と、いろいろな声を耳にする。

 そこで今回から数回に渡り、「教師の多忙の実態」をご紹介する。
 そして、その「具体的解決方法」を、考えていきたい。

 実はこのテーマ、相当“重い”ので、今まで避けてきた。
 しかし、そろそろ書かねばなるまい。

----------------------------------------------------------------------
(2)「学級の仕事」と「学校の仕事」――どちらが優先されるべきか?

 ここで問題。
 教師の仕事に優先順位をつけるとすると、次のどちらが実態に即している
か。
 つまり、現場の教師たちはAとBのどちらで仕事を進めているのだろうか?
 考えてみていただきたい。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【A】まず学級の仕事。次に学年全体の仕事。最後に学校全体の仕事。

【B】まず学校全体の仕事。次に学年全体の仕事。最後に学級の仕事。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

●学級の仕事とは、まずなによりも、日々の授業の準備と教材研究。
 他に、テストの採点、宿題の評価、その他子どもの提出物の評価や整理、成
績の管理、教室の整備、集金の整理、指導要録・保健簿の管理、保護者会・懇
談会、個人面談、などなど。

●学年の仕事とは、学年行事(遠足、社会科見学、音楽会、その他様々)の準
備、学年費の会計庶務、などなど。

●学校の仕事とは、各担当教科ごとの様々な仕事(学校文集の編集、理科室備
品管理、視聴覚機器管理、体育備品管理、各教科の研究授業準備など多様)、
各担当分掌ごとの様々な仕事(避難訓練計画、図書室管理、学籍管理、全児童
の名簿管理、校外連絡網の管理、PTA広報、教務、庶務、総務、評価委員
会、運営委員会、児童理解委員会、人権教育委員会、運動会委員会、などなど
多様)(以上、順不同、思いつくまま)……数え上げたらきりがない。
 なお、複数学年にまたがる仕事(児童のクラブ活動・委員会活動などに関わ
るあらゆる仕事)も、ここに含めるものとする。

 さて、これらの優先順位は、AとBのどちらなのか。
 正解は、Bである。Bが、実態である。

 しかし、多くの読者の方は、Aでなきゃおかしい、と思われたのではなかろ
うか。
 だって、学校というのは、「子ども」のためにあるのだ。
 目の前の子どもたちのための仕事を優先するならば、Aでなければおかしい
はずだ。

 そう思った方は、正常な感覚の持ち主だ。
 私も、Aであるべきだと思う。
 私が教師に成り立てだった頃、学校の教頭に「Bが当然だ」と教えられ、
ショックを受けたことを思い出す。
「授業準備なんて、一番最後にやるべきことだ」と断言されたのだから。

 授業準備をいつも最後に回していたら、どれだけ時間があっても仕事は終わ
らない。
 明日の授業の準備は、どうしたって必要なのだ。
 学校でできなければ、家でやるしかない。
 寝る時間を削るしかなくなる。

 Bの毎日では、必然的に多忙になってしまうわけだ。

 だが実際のところ、Bを免れることは難しい。
 学校は、組織だからである。
(しかも、上には教育委員会がある。教育委員会から降ろされる仕事も、かな
 りの量にのぼる)

 しかし、だからといって、このままでよいはずがない。
 「明日の授業の準備」を差し置いて、毎日毎日、「学校全体の仕事」を優先
しなければならない現状を、放置してはいけないのである。
 ではどうすればいいのか。次回以降で書いていく。

----------------------------------------------------------------------
(3)1日13時間の仕事のうち、「学級の仕事」に何時間充てられるのか?

 (2)の内容をもう少し分かりやすく書くと、現状はこうだ。

――― 8:00―――

 教師は、朝8時に出勤し、すぐに1時間目から5〜6時間目まで授業をす
る。(その間、休憩は1〜2分しか取れない)
 終わるのは、だいたい15時。
 正規の勤務時間は、もう2時間しか残っていない。
(正規の退勤時刻は、通常17時だ)
 本当は、ここで休憩時間なのだが、まともに休憩しているヒマはない。
 次の仕事が待っている。

―――15:00―――

 ここから、恐るべき量の「学校の仕事」を片付けなければならない。
 さらに、「学年の仕事」も大量にある。
 ここまでで、だいたい20時。
 気がつくと、日がどっぷりと暮れている。
 夕食らしい夕食はとれず、菓子類で空腹をごまかす。
 手を休めているヒマはない。

―――20:00―――

 ようやく、「学級の仕事」に入れる。
 そのために学校で22時ごろまで残業していく教師もいるが、多くは家庭に
持ち帰る。
 とはいえ、できてもせいぜい1時間。
 独身ならまだしも、多くの教師には「家庭の仕事」もあるのだから。
 しかも、明日の朝も8時に出勤だ。寝ないわけにはいかない。

***********

 要するに、教師は、1日に13時間以上も仕事をしているにも関わらず、そ
のうち、「学級の仕事」に充てているのは、せいぜい1時間なのである。
 まあ、多くみても2時間だ。
 これでは、質の高い授業・質の高い学級経営ができるはずがないではない
か。

 ある日私は、かなり朝早い時刻に出勤した。
 すると、あとから来たある教師が私に言った。
「なんでそんなに早く来てたの? 行事があるわけでもないでしょ」
「今日の授業の準備のためですよ」
「え〜!? 授業準備? えらいわねえ。あたしなんて、ほとんど準備なしで
 やってるわよ」
 呆れたけれど、これがやむをえない実態なのかもしれない、と思った。


(ちなみに、17時以降の勤務は当然「残業」だが、「残業代」は教師には一
 切支払われない。微々たる「教職調整手当」が払われるだけである)
----------------------------------------------------------------------

 今回はここまで。
 教師の多忙の実態を、概略的にご紹介した。

 次回からは、もう少し具体的に見ていく。
 たとえば……

●職員室での仕事風景――この効率の悪さが、仕事時間を倍増させている!

●無駄な会議や研修が多すぎる!
 漠然としたおしゃべりに終始する会議、役にも立たない研修を削減せよ!
 効率よく会議や研修を行うには、どのような手法が有効か?

●よく言われる教師の「雑用」とは何なのか?
 本当に「雑用」なら、切り捨てるべきだ。
 不要な仕事は、ないのか?
 その具体例で検証する。(きりがないけど)

●「多忙」ドキュメント
 とある教師の1日/とある教師の1週間/とある教師の1年間

 どうぞお楽しみに。

(上記●の内容は、あくまでも予定ですが)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――