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小学校教育が危ない! 全バックナンバー一覧

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       No.25  2006/9/20  著者:福嶋隆史

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  No.25 教師の力量が現れる「日常場面」“TOP10”(中編)

              前編  中編  後編

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 今回は、前号の続き。
 本文中の●は、福嶋が提示する解決方法である。

★第6位★------------整列のさせ方------------------------

【問い】次の中で、整列のさせ方として最もよいものはどれか。
   (理科室や音楽室への移動など、教室移動の際の整列を想定)

1……日直や代表委員の子が号令をかけ、他の子たちを整列させる。
   教師はその場にいなくてもいい。子どもの自主性に任せる。
2……教師が号令をかける。
   「気をつけ、前へ倣え」と号令をかけておき、指示に従っていない子を
   1人1人注意していく。1人残らず全員がきれいに揃うまで「直れ」は
   言わないようにする。そのためには、時間を3〜4分くらいかけてもい
   い。
3……教師が号令をかける。
   「気をつけ、前へ倣え」と号令をかける。
   すぐに「直れ」と指示し、またすぐに「気をつけ、前へ倣え」と指示。
   これを数回繰り返し、長くても20秒程度で全員が揃うようにする。

 1のように日直などの指示で並ばせようとしても、ヤンチャな子達はいつま
でもふざけていて、並ばない。
 周囲の女子たちから、
「早くちゃんと並んでよ! いつも○○くんのせいで理科の時間が少なくなる
 んだからね!」
などと非難されようとも、意地になったかのように悪ふざけを続ける男子もい
る。

 そういう場合、確かに、悪ふざけをする子が悪い。
 しかしそれ以上に、「子どもに対する指示や号令を子どもに任せる」という
教師の行為は、数倍悪い。
 教師は、学級の統率者である。
 整列させるのは、教師の仕事だ。
 だがそれを、「子どもの自主性」という美辞麗句の下に、放棄する。

 そして、いつまでも自分のクラスの子が整列できていない廊下に、担任教師
が“のこのこ”現れて、眉間にシワを寄せてイライラしながら次のように言い
放つ。
「また遊んでる! いい加減にしなさい! クラス全員の責任ですよ。ふざけ
 ている人がいるなら、ほかの子が注意すればいいでしょう? 注意しない子
 も悪いんですよ! お互いに注意し合いなさい!」
 ……などと。
 本当に、注意しない子が悪いのだろうか?
 注意したって聞き容れない子――教師が注意してもなかなか聞かないような
大変な子――に対して?

 こんな暴言暴挙を教師が2〜3回繰り返せば、クラスはすぐに荒れ始める。
 学級崩壊には、様々な入り口があるのだ。

 さて、正解は2か3。
 もうおわかりと思うが、答えは3である。

 では、なぜ2ではいけないのか。
 想像してみてほしい。
 2の場合、騒がしい子を注意している間、他の子はずっと手を上げたまま
だ。
 真面目な子は、いつまでも腕を上げているので、疲れる。
 そして、「真面目な人間は馬鹿を見る」ということを学習してしまう。

(教師の9割は、いつも「うるさい子」ばかりをかまっている。
 そして、「真面目な子」「静かな子」を放置してしまう。
 整列でも、授業でも、なんでも。これではいけない)

●私の場合、「気をつけ、前へ倣え」から「直れ」まで、3秒である。
 その3秒を苦に思う子は皆無だ。
 最初の3秒で、およそ半分の子が揃う。
 2回目の3秒で、クラスの4分の3が揃う。
 3回目の3秒で、ほぼ全員が揃う。
 ここでまだふざけている子は、せいぜい2〜3人。

 そういう子は、注意なんてせず、放っておけばいい。
 移動が始まれば、たとえ最後尾からでも、一緒についてくる。
 それが子どもというものだ。

●「とにかくカンペキに整列できなければ、移動させない」という思想は、な
くすべきだ。
 相手は所詮、子どもである。
 なんでもかんでも完全にできるはずがない。
 そういうおおらかな思想も、大切なのだ。
 このことは、以下の「5位」「3位」の内容にも関係する。


★第5位★---------給食当番を連れて行くタイミング---------------

【問い】次のうち、給食当番を給食室へ連れて行く際の教師の動きとして、最
もすぐれているものはどれか。

1……子どもたちが自主的に教室の前に並ぶように仕向け、自主的に移動させ
   る。教師は、後ろから見守りつつ、ついていく。
2……教師が、当番を教室前の廊下に整列させる。全員がカンペキに整列する
   までは、移動させない。
3……教師が、当番を教室前の廊下に整列させる。しかし、ある程度揃った
   ら、まだ白衣を着ている途中の子がいても、そのまま教師が先頭に立っ
   て出発(移動)してしまう。

 今度は、すぐにお分かりになっただろう。1と2は、ダメだ。
 正解は、3である。
(ただし多くの教師が、1と2を実行している)

 この正解に納得のいかない方もいらっしゃると思う。
 取り残された子が可哀想じゃないか、と。
 しかしそんなことはない。
「出発直前に子ども同士のトラブルが始まった」などの特別な理由なら待って
あげなければならないが、たいていは、「単に遅いだけ」である。

●そういう子に対して、「早くしなさい!」と何度言ってもだめである。
 「先生は近くで待ってくれている」という安心感があるから、どうしても、
ノロノロしてしまう。
 教師は、ひとこと「はい、出発します」とだけ言って、すぐに出発するべき
だ。
 「待って〜〜〜!」と呼ばれても、待ってはいけない。

 給食は、時間との戦いなのである。
 給食を食べる時間は、長くてもたったの20分。
 ちゃんと噛んで食べさせたければ、残さずに全部を食べさせたければ、時間
の確保が欠かせない。
 そのためには、給食当番の準備時間をいかに短くするかが、最重要なのであ
る。

 どんなに準備が遅い子でも、自分のクラスの当番の列が給食室に到着するま
でには追いつく。
 もちろん、追いつくために思いっきり走らせてはいけないが、多少の小走り
くらいはよかろう。
 「急がなきゃ」と意識させ、実際に急がせるには、出発してしまうのが一番
だ。白衣なんて、歩きながら着たっていいのだから。体操着に着替えるのとは
わけがちがう。羽織るだけ。簡単なことなのだ。
 
●ただし、遅い子の実態に応じて、途中で待ってあげるなどの配慮は必要だ。
 私はたいてい、教室から15mくらい離れた廊下の途中の水道で、当番の子
に手を洗わせながら、そのような「遅い子」を待ってあげた。
 私のクラスは、12時15分きっちりまで4時間目を行った上で、全員が給
食室に到着するのが12時20分くらいだった。いつもたいてい、私のクラス
が、全学年・全クラスの中でも到着時刻ナンバー1だった。
 子どもたちはナンバー1で到着できると喜んだ。そして早く準備ができる
分、子どもたちはゆっくりと食べることができた。
(別段、給食室と教室の距離が短かったわけではない)

●この方法には、重要なポイントがひとつある。
 それは、4時間目を延長しないこと。(いや本来は、すべての授業を、延長
しないこと!)
 4時間目の授業を延長してしまったら、どんなに給食当番を早く動かしても
無駄だ。
 私のクラスの子たちがゆっくりと談笑しながら給食を食べているときに、目
の前の廊下を、他の学年の給食当番が給食室に向かって歩いていく姿を、何度
となく見た。
 そういうクラスは、授業延長の影響で遅くなっているのだ。
 ちなみに私は、年に4〜5回しか授業を延長したことがない。
 やむをえず延長したとしても、せいぜい2〜3分である。


★第4位★---------給食のとき、教師が座る位置---------------

【問い】給食のとき、教師はどの場所で食べるべきか。

1……教師の机
2……子どもの机(子どもの机に、子どものと同じサイズの机をくっつけてそ
   こで食べるのも同じとする)

 これはシンプルだ。
 多くの教師――おそらく8割の教師――は、2だろう。
 特に低・中学年の教師。
 子どもとの「心の交流」ができるチャンス……というような意識で、そうし
ている教師が多い。
 まあ確かに、それは「あり」だと思う。
 その価値を否定はしない。
 しかし、正解は1だ。

 その理由は2つ。
●第1に、教師はクラスの子全員を常に視野に入れていなければならないから
である。
 給食のときというのは、子どもたちの気が緩む。
 いじめの「芽」も、こういうときにチラチラと現れる。
 教師は、見ていないようなふりをしながら、全員の子どもたちをじっと見
て、いじめの芽となる行為を見逃さないようにしなければならない。

 手についたパンくずを、特定の子の机の上でわざと「パッパ」と払う。
 役割分担して後片付けをするとき、特定の子に汚れた皿やゴミ(ベタベタし
たジャムの入れ物など)が集まるように仕向ける。
 あるいは、単に、特定の子を「しかと」する。

 最後のパターンが、一番気づきにくいかもしれない。
 一見、あの班は楽しく談笑しているなあ、と見える……
 しかし、よく見ると、特定の子だけは、黙々と食べている。
 笑顔がまったくない。
●そんなときは、教師が明るく近づいていって、黙々と食べている子も一緒に
なって楽しく食べられるように、ちょっとだけ話しかけてあげればいい。

 そのような配慮をクラス全体に対して常に行うためには、教師は必ず、全体
が見渡せる教師の机についていなければならないのである。

●第2に、安全への配慮のためである。
 給食のときに、不審者が突然乱入してきたらどうするか?
 このような注意を常に払っていなければ、どんなに不審者対策の避難訓練を
積んでいてもダメだ。
 これは給食のとき以外でも当然必要だが、1日のうちでもかなり子どもたち
の注意力が散漫になる給食タイムでは、教師こそが注意していなければならな
い。
 私は、給食のときは常に廊下にも目を配っていた。

 これは、教室全体を見渡せる位置に座っているからこそできる配慮である。
 これがもし、子どもの机に一緒になって向かっていたらどうだろう?
 特に、廊下に背を向けるような位置で座ってしまったら?
 不審者を未然に発見するどころか、子どもがナイフで刺されてから気づくと
いうことすら考えうる。


★第3位★---------掃除に対する評価の仕方---------------

【問い】掃除に対する評価を、どうすればよいか。最適なものを1つ選べ。

1……掃除は、子どもたちが精一杯やればそれでいい。
   評価はとくにいらない。
   教師は、子どもが掃除している間は、職員室で仕事をしていればいい。
2……掃除を見回りながら、「きれいになったね」「がんばってるね」などと
   ほめてあげればそれでいい。
3……2とともに、時には、数値による評定を加えるようにする。

 私のメルマガのファン?の方々は、すぐにピンと来ただろう。
 そう、答えは3だ。

 まあ1はもってのほかだ。
 いやもちろん、職員室でどうしてもやらなければならない仕事があることも
あるだろう。校長に呼ばれることもあれば、電話に出なければならないことも
ある。
 しかし、掃除の様子を全く見て歩かない教師は、困りものだ。
 真面目にがんばって掃除している子どもたちは、教師にほめてもらいたいと
いう気持ちが必ずどこかにある。6年生だってそうだ。
 それにこたえてあげなくては、真面目な子だっていずれはサボるようになっ
ていく。

 いわゆる「Plan,Do,See」である。

●掃除当番を決め(Plan)掃除させたら(Do)、あとは評価(See)
しなければならない。

 2のような評価もよい。
 しかし、これだけでは、あまりうれしくない。

 私は、次のようにした。
●ときどき、「掃除チェックウィーク」を作る。
 1週間(5日間)毎日、クラス全員の“掃除ぶり”を個々に点数化するので
ある。
 テストの点数などを記入するためのクラス名簿を台紙にはさみ、持ち歩きな
がら、掃除箇所をすべて見て回る。
 給食(あるいは昼休み)が終わった瞬間から、チェックする。

 ・いかに素早く掃除に取り掛かるか(遊んでいないか)。
 ・どれだけ丁寧に行っているか。
 ・時間内に終わらせるという意識はあるか(丁寧すぎてもいけない)。
 ・その他、創意工夫や協力の姿勢があれば追加ボーナス点。

●上記のような評価規準を作る。
 10点満点。
「10点満点で点数をつけます」と宣言し、これらの評価基準を説明したら、
あとは、掃除中に声をかけることはほとんどしない。
 それこそ、子どもたちの「自主的な」動きを期待して見守るのである。
 無論これは、美辞麗句による放任とは違う。教師が明確な規準でチェックし
ているからである。

●最初の日は、評定をみんな低めにつけるようにする。
 普段どんなに真面目にやっているような子でも、よく見ていると結構
「ぼ〜っ」としている時間があるものだ。掃除時間というのは、そのくらい気
が緩むものである。
 まあ、給食を食べて眠くなり、しかも半日の疲れが出てくる時間帯だから、
それでも仕方ない。
 そんなわけで最初の日は、平均を7点くらいにするつもりでチェックする。
 最高でも9点止まり。
 1人につき、最低2回(2回それぞれにつき最低10秒)は見る。
 1回目は、子どもの目の前でチェックする。子どもは、当然、普段の何倍も
頑張る。(ここで褒めてはいけない。点数発表までとっておくのだ)
 2回目は、少し時間を置いて、遠くから見守る。ここで、その子の本当のや
る気が分かる。

●5時間目の最初に、全員の点数を一気に発表する。
 多くの子どもたちは、固唾を呑んで耳を傾けている。
 さらにすべての子について、短く端的に、その点数になった理由(根拠)も
伝えるようにする。

「Aくん、4点。走り回って遊んでいるのを、3回見ました」
「Bさん、7点。がんばっていましたが、ホウキの使い方がちょっと雑でし
 た」
「Cくん、8点。とても丁寧でした。でも、バケツの水がこぼれているのを拭
 いて欲しかったなぁ」

 このように、素早く評定し、評価する。
 これだけの「根拠」を(全員分)提示して初めて、子どもたちは思う。
「ああ、先生は本気でチェックしてるんだな」
「あしたは、もっとがんばろう」

●翌日は、グンと集中力が上がる。
 しかし、せいぜい0.5点アップにとどめる。
「Aくん、4.5点。走り回っていた回数が、1回減りましたよ(笑)」
「Bさん、7.5点。ホウキの使い方、うまくなってきたね」
「Cくん、8.5点。今日はちゃんとバケツの周りの水を拭いたね、えらい」

●さらに次の日、あるいは4日目。
 日ごろふざけている子ががんばっていたら、グンと点数をアップさせてもい
い。
「Aくん、7点! 今日は、走り回ってなかったね。それだけでも偉い!」
 クラスからあたたかい拍手。
「Bさん、9点。ほとんど文句なし!」
 ここで、クラス全員から「お〜っ」とどよめきが起こる。
 みんなのやる気が、一層高まる。
「Cくん、8.9点。きのうよりも、取り掛かる時間が早かったね。でも、きみ
 なら、もっとがんばれそうだね」
 Cくんは、Bさんより0.1点低くて悔しい。

●そして、最終日(5日目)。
 ここで、全員を何かしら、ほめたいものだ。
 ただし、ほめられない材料が目立つ子は、まあ仕方ない。
 教師の裁量で“誇張”はできても、“嘘”はつけない。
「Aくん、残念、6.5点。0.5点下がっちゃったね。Dさんと2〜3分、虫カゴ
 の中、見てたでしょ…?」(あまり深刻に言わない。笑顔で言えばいい)
「Bさん、すばらしい! 点数は……10点!!! 雑巾がけのとき、指を広
 げて雑巾をちゃんと押さえて、とても丁寧にやっていたし、その上、きっち
 り時間通りに終わっていました」
 拍手が起きる。
「Cくんは……10.1点!!! おなかが痛くて保健室に行っていたEさんの仕
 事を、進んでやってくれていたね。先生は、ちゃんと見ていましたよ。感動
 しました。だからボーナス!」
 10点満点を超えるボーナス点に、さらにクラスは湧く。
 きのう悔しかった分を取り返して嬉しいCくん。

●そんなこんなで、「超」盛り上がった掃除チェックウィークは終わる。
 次週から少しモチベーションが下がるのはやむをえない。
 しかし、少なくとも、掃除チェックウィーク以前と比べたら、比較にならな
いくらいちゃんとやるようになっていること請け合いである。
 私は、今度いつ点数つけるの、と何度も言われて、困ってしまったほどで
あった。

 でもしばらくは、やらない。
 何事も、やりすぎはよくない。
 ここで初めて、「掃除というのは、自分たちのお世話になっている教室や廊
下をきれいにしてみんなで気持ちよく使えるようにするために、やるんだよ」
という道徳的な話を、すればいい。
「みんななら、もう、それが十分にできるはずだよね」と。

*****

 ただし、念のために書いておく。
 掃除とて、所詮は子どもがすることである。
 10点満点といっても、大人が掃除をした場合のレベルと比較してはいけな
い。
 あくまでも、その学年の子が精一杯やってできる範囲で、判断してあげなく
てはならない。

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 今回も、豊富な具体例を入れたため、長くなった。
 ご容赦いただきたい。
 次週は、

2位……叱り方
1位……ほめ方

を書く予定である。

 (あくまでも予定なので、まったく別のテーマになるかもしれません。
  念のため)

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