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        》》》 小学校教育が危ない! 《《《

       No.27  2006/10/4  著者:福嶋隆史

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        No.27 「イベント」が多すぎる!(その1)

  ~小学校には、いったいどれだけの行事(イベント)があるのか?~

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★ 目 次 ★

(1)まえがき
(2)学習指導要領上でのイベントの扱いは?
(3)1年間で、これだけのイベントがある!
(4)あとがき

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(1)まえがき

 学校行事、学年行事、学級行事。区内・市内の合同行事。
 一般的な規模の公立小学校において、これらの行事(以後「イベント」と表
記)は一体いくつくらい実施されているか、ご存知だろうか。

 そして、そのために、いったいどれだけの授業時間が割かれているか、お分
かりだろうか。

 どんなに指導力のある教師がどんなに優れた授業を行っても、全体的な授業
時間数が減ってしまっては、学力定着はおぼつかない。
 ただでさえ、平成14年度から「総合学習」が導入され、主要教科の授業時
間数は大きく減っている。
 それなのに、“これでもか”というほどのイベントの嵐。
 イベント、イベント、またイベント。

 小学校教育においてはイベントが「主」で、教科学習は「副」であるという
考えを持っている教師も、かなり多い。

「イベントのためならば、国語や算数なんてどんどん削っていい」
 そういう勢いの教師を、私は何人も見てきた。

「子どもたちは、イベントを通して、協力することの大切さを知る。イベント
 を通して、クラスや学年・学校全体の結束が高まる。その結果として『生き
 る力』が培われる」
 そうやって美辞麗句を並べ立てる教師が、たくさんいた。

 私はまったく逆の教師だった。

「不要なイベント、価値のないイベントは、どんどん減らせ」
「必要なイベントだとしても、必要最低限の時間で準備・実施すべきだ」
「教師の“見栄”や“プライド”を保つために、過剰な準備時間を取るな」
「すべての基礎となる国語や算数の時間数を、もっとしっかり確保せよ」

 そういうことを、私は現場でいつも訴え続けてきた。
 だが、多くの場合、却下された。

 まあ確かに、イベントを通して「協力性」や「結束力」「生きる力」が培わ
れるという意見を、全否定するわけではない。実際私自身、「あのイベントが
あってよかった、子どもたちが大きく成長した」――そう思えるものも、結構
あった。

 しかし、イベントの規模が大きくなればなるほど、どうしても準備時間が増
えてしまう。
 そして、終わったあとの「反省」やら「振り返り」やらの授業も増える。
 こうして、事前事後の授業時間が増え、国語や算数のための時間が、どんど
んイベントに割り当てられていく。

 学校で基礎学力を定着させられない1つの要因は、間違いなくこの「イベン
ト過多」にある。
 その現状について、今号から2~3回にわたり、論じていきたいと思う。

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(2)学習指導要領上でのイベントの扱いは?

 現場教師の方々は、ここまでお読みになって疑問を持ったかもしれない。
「何を言っているんだ? 国語や算数とは別に、ちゃんとカリキュラム上で
 行事のための時間枠が組まれているではないか?」
 ……と。
 そう、その通りだ。
 主に「特別活動」がそれに当たる。
 特別活動は、学習指導要領上、下記のように分類されている。

A 学級活動
B 児童会活動……委員会活動や、たてわり行事など
C クラブ活動
D 学校行事
  (1)儀式的行事……始業式、終業式、入学式、卒業式など
  (2)学芸的行事……文化祭的イベントなど
  (3)健康安全・体育的行事……発育測定、避難訓練、運動会など
  (4)遠足・集団宿泊的行事……遠足・宿泊体験学習など
  (5)勤労生産・奉仕的行事……ボランティアなど

 確かにこれらは、教科指導とは別枠で時間数を取れることになっている。

 しかし、学習指導要領上でこれらに当てられている時間数は、1年間でたっ
たの35時間である。
 この場合の1時間とは、1単位時間であり、実際は45分を示す。
 年間たったの35単位時間で、これらすべての行事が終わるはずがない。
 いや実際は、“余剰時間”といって、もう少し時間を追加できる場合が多い
のだが、それでもまだまだ足りないのが普通である。

 それなのに、イベントは減らない。

 では、学校現場では、どうやってこれらのイベントをこなしているのか。
 そう。もうお分かりだろう。
 「教科」や「総合学習」の授業を次々と削って、対応しているのである。
(「総合学習」は、行事に充当するには“もってこい”の「何でもタイム」と
 化しているのが実情である。総合学習で充当すべき正当な理由があればよい
 が、怪しい場合が多い)

 とはいえ、国語や算数には、「最低これだけの時間数は実施しなければなら
ない」という、いわゆる“法定時間数”がある。だから、それ以下には削れな
いことになっているのだ。そして、その中でちゃんと授業していれば、学力定
着を保証できるはずなのだ…!
 しかし、次々と押し寄せるイベントの準備がどうしても終わらず、国語や算
数をやむなくそれに充てているような教師は、たくさんいる。
 彼らに悪気はないのだが、そうせざるを得ないというのが、現状だ。
 その分の国語や算数をあとでまとめてやるわけだが、そううまくいくもので
はない。イベントのしわ寄せのせいで1日に4時間も算数をやったりしたら、
いくらなんでも子どもは算数嫌いになってしまう。

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(3)1年間で、これだけのイベントがある!

 さて、ここで、小学校で1年間に実施されるイベントをしらみつぶしに挙げ
てみたい。
 とはいえ、特定の学校の「年間計画」をここに書き写すわけにはいかないの
で、平均的にどの学校でも実施されると思われる内容を、ピックアップしてみ
ようと思う。

 これらの中には、必要なイベントも無論あるが、不要なイベントも多い。
(あとで別記する「その他のイベント一覧」が、またクセモノなのだ)
(以下、ただし書きのないものは、ほぼ全学年実施のイベントである)

―――【4月】―――――――――――――――――――――――
・入学式(1年生)(通常は、後半に2年生も参加して“得意な遊び”を発表
          したり、校歌を歌って聞かせてあげたりする)
・始業式、着任式、離任式
・写真撮影(1年生)
・新入生を迎える会
・発育測定/歯科指導/眼科検診/視力検査/聴力検査
・心臓検診(1年生)
・避難訓練/防犯授業

―――【5~6月】―――――――――――――――――――――
・避難訓練
・集団下校訓練・引渡し訓練
・耳鼻科検診(1年生、4年生)/内科検診
・運 動 会
・修学旅行(6年生)
・学年ごとの遠足(秋季に実施しない学年)
・プール清掃(6年生)
・自動車工場見学(5年生)
・歴史資料館見学(6年生)

―――【7~8月】―――――――――――――――――――――
・宿泊体験学習(4~5年生)
・宿泊体験学習の事前発表会、事後発表会
・区(市) 水泳大会(4~6年生)
・大掃除
・終業式(3学期制の場合)

―――【9~11月】――――――――――――――――――――
・総合防災訓練
・避難訓練/不審者対応訓練
・発育測定/歯科指導
・自由研究作品展
・プール清掃
・区 音楽発表会(3~4年生くらい)
・区 球技大会(5年生)
・清掃工場見学(4年生)
・二分の一成人式(4年生)
・国会見学(6年生)
・全校たてわり遠足/たてわり給食/たてわり会議
・終業式(2学期制の場合)
・市 体育大会(6年生)
・○○小学校 フェスティバル(文化祭的行事)
       あるいは学習発表会
・音楽鑑賞教室/演劇鑑賞教室
・秋季作品展

―――【12~2月】――――――――――――――――――――
・終業式、始業式(3学期制の場合)
・大掃除
・発育測定
・避難訓練
・学年ごとの遠足(春季に実施していない学年)
・校内書写展
・クラブ発表会
・クラブ見学(3年生)

―――【3月】―――――――――――――――――――――――
・卒業式練習(5・6年生)
・卒業式予行(5・6年生)
・卒業式(5・6年生)
・卒業生を送る会
・大掃除
・修了式

――――その他のイベント一覧――――――――――――――――
・ゲーム集会、たてわり集会、音楽集会、○○集会(ほぼ毎週)
・敬老関連行事
・手話・点字等の福祉学習関連行事
・地域関連行事

――――学年・学級レベルでの小規模イベント―――――――――
・○○パーティ
・転校生を迎える会、送る会
・クラス交流ドッヂボール大会
・クラス交流なわとび大会
・その他いろいろ

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(4)あとがき

 上記の一覧を見て、「なんだ、少ないじゃないか」とつぶやいた人がもしい
るとしたら、それは大間違いだ。
 繰り返すようだが、これら1つ1つのイベントには、事前の準備時間と事後
の振り返りの時間などがすべて付随してくることを、忘れてはならない。

 実際のイベントがせいぜい2~3時間だったとしても、そのために10~
15時間程度の準備をするなどはザラである。
 1週間に行われる全授業時間数がおよそ25時間だから、その割合の大きさ
が分かるだろう。

 もちろん、上記一覧の中には教科学習に直接関連があるイベントも多い。
 これらを教科の授業で充当すること自体には、何ら問題ない。
 しかしやはり、1回のイベントにかける時間数が、必要以上に多すぎるので
ある。

 たとえば、運動会の学年演技(表現種目)の練習なんて、私が指導を担当し
たときは、5時間で終わらせた。すべて、体育の時間で足りた。
 それだけで、子どもたちは見事な演技ができるようになった。
 演技(踊り)の出来を、他の教師や保護者たちからも、大いに評価された。
 ところが、ふつうの先生は、それを15時間、20時間とかけるのである。
 これでは、他の教科に影響しないはずがない。

 次回は、これらのイベントのいくつかを、詳しく検証していきたい。
(不要なイベントには、どのようなものがあるのか。
 なぜ、それらが不要といえるのか。
 なぜ、不要なのに時間をかけてしまうのか。
 なぜ、時間がかかってしまうのか。
 …などなど)

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