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小学校教育が危ない! 全バックナンバー一覧

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       No.24  2006/9/13  著者:福嶋隆史

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  No.24 教師の力量が現れる「日常場面」“TOP10”(前編)

              前編  中編  後編

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 教師の力量が現れ出る日常場面はいくつもある。
 今回は、その“TOP10”ともいうべき場面をご紹介する。
(今号では、10位〜7位を書く)
(本文中の●は、福嶋が提示する解決方法である)

 ミニクイズ形式で書くので、教師になったつもりで解答をお考えいただきた
い。現に教師の方々には、さぞかし耳が痛かろうけれども、がまんしてお読み
いただきたい。

★第10位★--------テストの採点場面------------------------

【問い】テストの採点は、いつやるべきか。
   (ある程度まとまった範囲の学習単元ごとに行う、市販テスト)

1……学校での仕事が終わった後、自宅に持ち帰ってゆっくりマルつけする。
2……5時過ぎ、会議等が終わった後、残業しながら学校で行う。
3……テストを行う授業中(45分間)に、すべての採点を終わらせる。

 実態は、1と2の教師が90%以上である。
 しかしこのやり方だと、どんなに早くても、子どもへの返却は翌日以降にな
る。
 いや、それどころか、ずるずると返却が遅れて、何日も後になる可能性が高
い。
 下手をすると、他の雑事に追われて採点作業が遅れに遅れ、学期末まで返却
できなくなってしまう。

 テストというのは、やったその場で返すのが最も効果的だ。
 問題に関する細かな思考が頭に残っているうちに、間違えた問題をすぐやり
直すことで、学習効率がぐんと高まる。
 それでこそ、テストをする意味がある。
 それに、よい点を取ったときの喜びも、やった直後が一番大きい。
 ということで、正解は3だ。

 私は、実施したテストの7割を、その授業中に全部採点し、返却していた。
(残り3割は、様々な事情で、その場では採点しきれなかった)
「授業中に採点して返却も終える」なんていうと、教師の方々は「まさか?!
 できるはずがない!!」と思われることだろう。
 しかし、できるのだ。
 採点・返却だけではない。点数の記録作業まですべて終わる。
 しかも、子どもたちも、その授業時間内にテスト直しを終えてしまう。
 方法は次の通り。

1●全問を解き終わった子から、どんどん教師の所へ持ってこさせる。
2●まず、印刷された解答を手渡し、それを見ながら順番を待つように指示し
  ておく。
  これにより、順番待ちの間に、子どもたちは頭の中で仮の「テスト直し」
  を終えてしまうことができる。
  並んでいる間のおしゃべりも“予防”できる。
3●一度にマルつけする範囲を限定する(1番と2番のみ、など)。だいたい
  5〜10秒で済む範囲にする。その範囲が終わったら、すぐ次の子のテス
  トを受け取る。済んだ子は、列の最後尾に移動する(一方通行)。
4●テストの裏表、全問の採点が済むまで何度も持ってこさせる。
 (1人当たり、だいたい5〜6回持ってきて終了になる)
 (列を作るのは避けるべきだが、数人程度なら問題ない。待たせずに次々と
  回転させればよいのである。6人待たせても、一度に10秒以下だから、
  1分以内に順番が回ってくる)
 (点数の記録作業は、そのつど手元でパパッと行う)
5●すべての採点が終わった子から、自席でテスト直しをさせる。
  手渡してある解答と解説を見ながら、自分で行うように指示する。
 (間違いだらけで直しきれない子は、あとで休み時間などに呼んで3〜4分
  指導する)
6●直しが終わった子はテストを専用ファイルに綴じて、読書タイムとする。
*●5〜10秒の間に可能な程度の個別指導は、その場で行っても良い。
 (ケアレスミスの指導など)
*●重要な問題でミスが続出するようなら、次の授業で再度指導する必要があ
  る。それは、教師の指導法が悪かった証拠なのだから、子どもを責めては
  いけない。


★第9位★--------指名の仕方------------------------------

【問い】次のうち、授業中に発言させる際の指名の仕方はどれが最適か。

1……全員に対して「分かる人?」と質問し、「ハイハイハイハイハイ!!」
   と手を挙げさせ、指名する。
2……教室の右隅・前の席の子から、順番に当てていく。
3……列指名や、名札カードによるランダム指名など、様々なバリエーション
   で指名する。

 これまた1と2が、多くの教師の手法である。
 確かに、1は活気がある。いや、活気があるように見える。
 だが、活気があるのは一部の子たちだけである。
 分からない子・遠慮がちな子は、いつも「置いてけぼり」になる。
 それなのに、1しかやらない教師が、かなり多い。

 また、2では、緊張感が保てない。
 自分の順番は当分やってこない……という気持ちになってしまう。
 1も2も、子どもたちの授業への参加意欲が半減する方法である。

 やはり、正解は3だ。
 私は、下記のように様々な方法を用いて指名した。

●個人指名
  手は挙げさせず、教師が決めた子に指名する。
●列指名(縦)
  縦の列ごとに立たせ、前から順に発言させる。
  列は、ランダム。「前から」を「後ろから」にすることもある。
●列指名(横)あるいは(ななめ)
●名札カードによるランダム指名
  名前を記入したトランプのようなカードを用い、ランダムにチョイスして
  指名する。
●条件付の挙手指名
  「ノートに意見を1つ書けた子からどうぞ」
  「今日まだ一度も発言していない子からどうぞ」などなど。
●指名なし発表
  一切指名せず、言いたい子が立って発言する。
  ただし、他にも発言したい子がいる場合は、子ども同士で譲り合う。


★第8位★--------プリント類の配り方------------------------

【問い】プリントの配り方としてよいものはどれか。

1……教室の右隅から列ごとに順々に配り、後ろに回させる。
2……列ごとに後ろから配り、前の子に渡させる。
3……教卓の上に置き、取りに来させる。

 さて、今回はちょっと難しいだろうか。
 実は、1も2も3も、全部正解である。
 誤答があるとすれば、「どれか1つの方法だけを毎回行うこと」である。
 プリントを配布するというたったそれだけの行為においても、様々に変化を
つけ、子どもたちにとってできるだけ公平になるように配慮することが不可欠
なのである。

 いつも1の方法だと、左隅の列の一番後ろの子は、プリントをもらうタイミ
ングがいつも最後になってしまう。時間差にして1分半ほどだが、その子に
とっては、待ち遠しくて長い時間である。
 しかし、たったこれだけのことに気づかず、いつも右隅の列の前の子からプ
リントを配布しているような教師は多い。

 このようなことに関して、多くの子は、積極的には不平不満を言わない。
 特に高学年に近くなるほど、黙るようになる。
 しかし心の中では、ほとんどの子が「小さな不満」を抱いている。

 そんなとき、次のようにちょっと配慮するだけで、教師は子どもからの信頼
を勝ち得ることができる。

●「あ、そうだ。いつも右側から配るから、今日は左から配るね」
●「いつも前からだから、今回は後ろからね」

 また、3の方法も単調ではいけない。
「はい、取りに来なさい」
 これだけだと、いつも同じ子が競うようにして取りに来ることになる。
 おとなしい子は、「小さな不満」を抱きながらも、そういう乱暴な子たちに
は混ざりたくないので、ちょっと我慢して、最後に取りに来る。
 子どもたちをよく観察していれば、すぐに気づくことである。
(しかし気づいていない教師は多い)

 だから、こんな配慮が必要だ。
●「はい、プリントを入れるファイルを机の上にちゃんと用意できた子からど
  うぞ」

 もちろん、プリントぐらいでは、さほどの競争にはならないかもしれない。
 しかし、理科で使う「磁石セット」などになると、別だ。
 準備がまったくできてないはずのヤンチャな子が、走って取りに来る。

●「走った子は、いったん席に戻りなさい」
●「机の上に、理科の教科書とノートを準備できた子から取りに来なさい」
●「名前を書くためのマジックを準備できた子からどうぞ」

 などなど……こんな風に指示すると、たいていは、おとなしい真面目な子か
ら先に、取りに来ることになる。
 そういう子は、始めからちゃんと準備ができているからである。

 こうやって、子どもたちが胸に秘めている「小さな不満」を、解消していく
のだ。


★第7位★--------静かにさせる方法------------------------

【問い】中休み直後、3時間目の授業の最初。子どもたちが騒がしい。
   次の6つの「静かにさせる方法」を、最適なものから順に並べ替えよ。

1……子どもたちが思わず集中するような面白い授業を、いきなり始める。
2……「静かにしなさい!」と怒鳴る。
3……騒いでいる子の名前を個別に呼び、注意する。
4……毎時間行っている「授業最初の日直の挨拶」をしっかりと行わせ、落ち
   着かせる。
5……ちゃんと準備して待っている子をほめ、騒いでいる子も真似してくれる
   のを待つ。あるいは、「勉強の準備が出来た子から磁石セットを渡しま
   す」などと指示する。
6……5,4,3,2,1……とカウントダウンして、静かにさせる。

 さあ、今回は難しかったはずだ。

 まず、私が絶対にやらないのは、4だ。
「授業最初の挨拶」などという形式的なことを、私はこれまで一度たりとも
やったことがない。
 教育実習で、しかたなくやったとき以外は。
「はい、日直さん、ご挨拶」
「こ〜れ〜か〜ら〜、さんじかんめの、おべんきょうを、は〜じ〜め〜ま〜
 す!」
 なんてやっている間にも、授業時間はどんどん過ぎていくのである。
 また、「○○さん、しずかにしてください」などと、日直の子に他の子を注
意させている教師もいるが、もってのほかである。
 子ども同士の人間関係を壊す上に、やはり時間の無駄だ。

 ということで、4は並べ替えから外す。

 また、最適な選択肢が1であることは、言うまでもない。
 「静かにさせる」という発想自体を変えるのだ。
 「集中力を引き出す」のである。
 たとえば……
●その授業に関係する具体物を用意する。
 (騒いでいる間に、これは何ですか、などと物を見せ、授業に引き込む)
●映像資料の提示から始める。
 (部屋を暗くして、プロジェクターでスクリーンに映像を映す)
●知的に興奮するような問題(クイズ)から始める。
●「漢字フラッシュカード(輪郭漢字カード)」などを用いて集中させる。
 カードに書かれた漢字を、次々と一斉に音読させるだけ。
 半数以上の子は授業の準備ができているから、そういう子たちの声が集合し
 て、騒いでいた子たちの耳を刺激する。
 そのうち、全員がカードに集中するようになる。
 所要時間はせいぜい1〜2分である。
 その間、「静かにしなさい」なんて一度も言わない。

●5も、よい方法である。
 うるさい子を叱る前に、ちゃんと準備して待っている真面目な子に目を向け
 てあげること。
 これは、教師の基本である。
(しかし、これを忘れている教師があまりにも多い)
 ただし、5の方法ばかりをいつもいつもやっていると、効果は半減する。
 まあ、週に2〜3回が目途だ。

 同様に、6も、いつもやっていると効果がゼロに近くなる。
 が、ときどき(月に2〜3回)ならば、いいだろう。

 3は、短く行うなら効果がある。しかし、お説教を始めてはいけない。

 2は、時には必要なときもある。
 あまりにも多くの子がダラダラしている……あまりにもクラスの秩序が乱れ
ている……そういうときには、怒鳴ることも時には必要だ。
 しかし、極力避けた方がいい(せいぜい月に1回)。
 なぜなら、ちゃんと準備して真面目に待っている子にとっては、いい迷惑だ
からである。
 怒鳴ったのなら、必ずそういう子へのフォローが必要だ。

●「静かにしなさい!!」
     ↓
●「今、ちゃんと真面目に準備して待っていたという人、手を挙げてごらんな
  さい。なるほど。あなたたちは、問題ありません。えらいですね。
  さて、今騒いでいた人。全員立ちなさい」

 このように、叱る対象を、真面目に待っていた子達と「切り離す」「区別す
る」ことが、大切である。
 絶対にやってはいけないのは、延々と「全員に」お説教して「連帯責任」を
課すことである。
 全員が悪いなんていうことは、99.9%ありえないのだ。

 ということで、答えはこうなる。

 1→5→6→3→2

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 次号では、6位から1位を書く予定。

6位……整列のさせ方
5位……給食当番を連れて行くタイミング
4位……給食のとき、教師が座る位置
3位……掃除に対する評価の仕方
2位……叱り方
1位……ほめ方

(もしかしたら、2位と1位は次々号になるかもしれません)

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