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》》》 小学校教育が危ない! 《《《
No.23 2006/9/6 著者:福嶋隆史
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No.23 「確認」をする教師 しない教師
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常に「確認」する――
これを意識している教師は、「落ちこぼれ」の子をつくらない。
一方、意識していない教師は、子どもをどんどん「落ちこぼれ」させる。
様々な「確認の技術」を持っている教師は、子どもが抱えている大小の「問
題点」を、早期に発見できる。子どもを無駄に叱責しないで済む。
一方、「確認の技術」を持たない教師は、「問題点」が大きくなるまでそれ
らに気づかない。そして、あとから子どもを責め立てる。
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確認が必要な場面を例示してみよう。━━━━━━━━━━━
確認事項……★で表示
(1)朝の確認 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
★子どもがうわばきを履いているか、いないか。
たったこれだけのことを確認しない教師がいる。
冬。うわばきを忘れて、でも叱られそうだからそのことを言い出せなくて、
ずっと靴下のままで過ごしている子がいる。
当然、風邪を引いてしまう。
それに、画鋲などが足に刺さったら危険だ。
教師が、朝、ちょっと聞いてあげればいいだけのことだ。
(月曜の朝など、「うわばき忘れ」が増えそうなときは特に)
「うわばきを忘れた子はいませんか」
これだけ言えばいい。
あるいは、いつも忘れ物が多い子の足元をさりげなく見るだけでもいい。
そのようなことをせずに、子どもがずっと靴下のままだったことにあとから
気づき、次のように叱る教師がいる。
「どうしてもっと早く言わなかったの?!」
確かに、それは正しい言い分だ。
しかし、相手は子どもである。
そして、あなたは教師である。
「気づいてあげられなくて、ごめんね」
この思いが先に出る教師でありたい。
ほかにも、朝確認すべきことはたくさんある。
★(うわばき以外にも)忘れ物をして不安そうな子はいないか。
★具合の悪そうな子はいないか。
★登校時に友だちとトラブルになったような子はいないか。
多くの場合、子どもは、自分からそれを教師に話しにくるものだ。
しかし、話さない・話せない子もいる。
大事なのは、そういう子に気づいてあげることができるかどうかである。
すべては、子どもの顔つきや言動を1人1人全員について常時観察する「教
師の鋭い目」があればこそ、可能なことだ。
★子どもがクツのかかとをつぶしていないか。
月曜朝会などで整列しているときは、子どもの足元を見る。
子どもの心は、足もとに現れる。
なにか不満のある子は、かかとをつぶしている。
集中していない子は、つま先で砂いじりをしている。
左右逆に履いている子は、ちょっとおっちょこちょいだ。
(2)帰りの確認 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
★持ち帰るべき物を、ちゃんと持ち帰っているか。
教科書、ノートはもちろんのこと、白衣、体育着、水着など、随時持ち帰る
必要のある物について、ちゃんと持ち帰っているかどうかを確認することが必
要だ。
「ちゃんと持って帰るんですよ」
なんて言っただけじゃ、30人中10人が忘れる。
「持ち帰る準備が出来た人は、手を挙げなさい」
これだけで、その10人が5人に減る。
「この水着は誰のですか。これは? これは?」
教師が、水着を置いてある場所を一通り確認する。
これで、5人が0〜1人になる。
しかし、まだ甘い。
「さようなら」をして、教室を出るときにちゃんと持って出ているかどうかま
で、教師は確認しなければならない。
忘れっぽい子は、せっかく準備した物を、机に置いたまま帰ってしまう。
だから、教師は、子どもが次々と教室を出るときに、ざっと机の上をチェッ
クしなければならない。ざっと見渡すだけだ。たったそれだけ。
そこで気がつけば、子どもを呼び止めることができる。
そのような「詰め」をしないで、翌日、「どうして持って帰らなかったの?
! だらしないわね」などと叱り飛ばすのは、いかがなものか。
それは、教師としての技量が低い証拠だ。
だらしないのは、教師の方である。
★どの子とどの子が、いつも仲良く一緒に帰っているのか。
あるいは、帰っていないのか。
★いつも一緒に帰るはずの子達が、バラバラに帰っていないか。
★1人ぼっちで帰る子はいないか。
集団の統率者である教師は、このようなことにも目を向けていなければなら
ない。
子どもたちの人間関係を把握するためである。
「さようなら」をしたらもう子どもの人間関係なんて気にしない、というの
ではいけない。
(しかし、そのような教師は多い)
「いじめ」の芽を見つけ、それを早期に摘み取るのは、教師の重要な仕事で
ある。
私は、子どもたちが校庭に出て門に向かうまでの姿を、教室の窓からじっと
目で追っていることが多かった。あるいは、外に出て後ろ姿を見送った。
特に、女子のグループなどは、なかなかすぐに帰らない。
階段で、廊下で、校庭で……「さようなら」をした開放感のもと、いろいろ
なことを話している。
そういうときにこそ、人間関係のひずみが見える。
教師がさりげなくそんな会話に参加するのも、いいだろう。
(3)授業中の確認 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
<国語、算数など>------------------
★ノートをページの順番に使っているか。
子どもの中には、ノートを「片側のページから順番にめくって使っていく」
という当然のことができない子がいる。
3,4年生でも結構いる。
要するに、そのつどランダムに開いたページを使ってしまうのである。
そんな当たり前のこともできないのか……と言う前に、教師は自分の指示を
見直したほうがいい。
ノートの準備という、たったひとつのことを取っても、次のようにたくさん
の確認が必要だ。
○「ノートを出しなさい。出しましたか? 出したら、出しました、と言いな
さい」(子どもたちは、「出しました」と口々に言う。それを聞いて、遅
い子が準備し始める)
○「ちゃんとノートを出しているか、隣同士確認してごらんなさい」
(教師がチェックするのみならず、このように子ども同士でチェックさせる
ことで、別の緊張感が生まれる)
○「前の時間に使ったページを開いてごらんなさい。今日は新しい勉強なの
で、その次のページから使います」
と言いながら、子どもたちの机の間を素早く通り、様子を見て回る。せい
ぜい十数秒のことだ。
○「日付・ページ(教科書のページ数)を書きなさい」
「きれいに書けた人は、持ってきなさい」
日付・ページの記入をチェックするために持ってこさせることは、そんな
に毎回は必要ないが、時々は必要だ。(そういえば「連絡帳」なども、時々
持ってこさせて書き方をチェックすべきだ)
★重要な問いが、ちゃんとできているか。
国語でも算数でも、「その問題がちゃんとできていればこの授業の目標を達
成したことになる」というような、重要な問いがある。
その問いの答えをちゃんと書けているかどうかを、その授業時間内に、1人
残らず全員について、確認することが必要だ。
自力で正解にたどりついていなくても、黒板をちゃんと写してあればいい。
確認するときは、ノートを持ってこさせるのが一番だ。
「できた人からノートを持ってきなさい」
ここでは、いろいろな評価の方法がある。
たとえば、赤マルをつける。
あるいは、正解・不正解に関わらず、書いたという事実に対して、青マルを
つける。
「合格」「お見事」「カンペキ」などという市販のハンコでランクづけして評
定する。
あるいは、マルやハンコなどは一切つけずに、書いたかどうかだけをチェッ
クする。つまり、見るだけ。
(ノートを持ってこさせるときは、行列ができないように素早く見なければな
らない)
また、「先着10名様までです」なんて言うと、子どもは競って持ってく
る。
もちろんあとで、遅れてしまった子にも救済のチャンスを与える。
「では、今度は、さっきノートを見てもらえなかった人からどうぞ」
そういうときは、極めて簡単な問いにしておく。
いつも遅れてしまうような子でも、簡単な問いなら、教師のマルをもらうこ
とができる。
<体 育>----------------
★準備運動をちゃんとやっているか。
★クツの紐をちゃんと結んでいるか。あるいは、かかとをつぶしていないか。
★危ない行動をしていないか。
安全確保のために、これらはすべて不可欠な確認だ。
(4)その他日常生活での確認 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
★給食を、ちゃんと食べているか。
どの子が、どのくらいの量を食べているか。いないか。
給食は、綿密に栄養を考えられて出されている。
しかし、特定の食べ物を残してしまう子は多い。
そういう子にとっては、結局偏食と同じである。
……勉強よりも、まず健康。 健康は、食生活から…である。
個人面談で、「うちの子、ちゃんと給食食べてますか」と聞かれ、「たぶん
食べてますよ」なんて答える教師は、日ごろから子どもを見ていない教師であ
る。(まあ、給食のときにいつも100%見るのは無理としても…)
★掃除のとき、トラブルが起きていないか。
掃除というのは、教師の目が非常にとどきにくい場面である。
なにしろ、校内のあちこちにクラスの子が散らばってしまう。
教室。廊下。流し。○○教室。○○室。昇降口……
しかし、担任たるもの、毎日そのすべての場所を、一度だけでいいから見に
行かなければならない。
流し場で水遊びをしている子には、掃除の仕方を教えてあげる。
流し場の掃除なんて、やり方を知らないのが普通だから。
あるいは、冬場の冷たい水をものともしないで流し場掃除を熱心にやってい
る子には、思いっきりほめてあげる。
きみのおかげで、みんな気持ちよく流し場を使えるんだね、と。
教室から遠い体育館などの掃除であっても、そこを見落としてはいけない。
評価されてこそ、子どもは動くのである。
「あ、先生は今日も見に来てくれた」
その事実が、子どもを動かす。
体育館掃除なんていちいち見に行っていられない、という教師も多い。
しかし、それでいいのか?
せいぜい2〜3分あればいいのだから、見に行くべきだ。
「お、○○さん、がんばってるね。○○さん、ゴミはそろそろ捨てに行きなさ
いね。よろしく。じゃあ時間通り教室に戻るんですよ」
こんな声かけだけでいい。
こういうことをするかしないかで、子どもの教師に対する信頼度も変わって
くる。
★プリント配布時など、ちゃんとランドセルにしまっているか。
プリントは、もらったらファイルに入れて持ち帰り、親に渡す。
それが当然だ。
しかし、生活習慣がしっかりしていない子は、もらった時点で、机の中に押
し込む。
押し込む。押し込む。押し込む。押し込む。押し込む。
机が一杯になると、ロッカーに押し込む。
この「押し込む」瞬間を、見逃してはならない。
そういう子はいつも決まって同じ子なのだから、配布した直後にそういう子
たちに真っ先に目を向ける必要がある。
私が初任者の頃、私のクラスに、2〜3ヶ月分のプリントが机の奥から
「ど〜〜〜っ」と出てきた子がいた。
私は、それを見て、自分を恥じた。
「ああ、どうしてもっと早く気づいてあげられなかったんだろう」
その後は、逐一、目を配った。
ときどきは、机の中を一緒に整理してあげた。
重要なプリントについては、受け取りのサインを保護者に書いてもらうため
の「重要プリント受け取りサインカード」というものをつくり、子どもたちに
渡した。
そして、プリントを配布した翌日の朝、全員分を集め、チェックした。
ここまでの確認をしても、まだ徹底するのは難しい。
それが子どもというものだ。
しかし、教師は、それに甘んじてはいけない。
(5)イベントでの確認 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
イベントのときに最も大切な確認は、これである。
★ 子どもが揃っているか。
遠足などのイベント。
私は、学校を出て、目的地に行き、学校に帰り着くまでの間、合計して20
回近く、人数確認をした。
移動のたびに、「あたま数」を数えた。
誘拐などの犯罪を防ぐためには当然のことだが、これを欠かしたために子ど
もが迷子になったような例は、日本中でたくさんある。
また、「たてわり活動」もクセモノである。
たてわり活動では、子どもたちが「クラス」で集まらず「たてわり班」で集
まる。
これは、1〜6年生を、文字通り「縦に割った」班である。
各学年の子が数名ずつ所属している集団だ。
(クラスや学年は、「横割り」ということになる)
クラスならば、教師が子どもたちの顔をパッとみて、居る子、居ない子を把
握できる。
しかし「たてわり班」となると、班のメンバーリストを常備していない限
り、どの子が居てどの子が居ないのか、教師たちは把握できない。自分が担当
しているたてわり班の子の顔と名前と学年を全部覚えている教師は、おそらく
ほとんどゼロだから。
朝の「たてわりゲーム集会」なんて、危険そのものである。
子どもたちは朝登校して、そのまま集会に足を運ぶので、担任は、その集会
が終了するまで、自分のクラスの子達が全員登校しているのかどうかすら
チェックできない!
たてわり班の担当教師がちゃんとメンバーリストでチェックしてくれなけれ
ば、クラスの子が登校していない事実に気づくのが大幅に遅れることもある。
このたてわり活動のやり方は絶対に危険だ。
登校時に誘拐などがあっても、発見が遅れてしまう。
考えればすぐ分かることだ。
私は、どの学校でも、この問題点を職員会議などで指摘し、改善してきた。
しかしいまだに、この問題点を放置している学校は多いに違いない。
日本中。
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これらは、ほんのわずかな例にすぎない。
教師は、「確認」を怠るなかれ!
綿密な「確認」さえしていれば、学級崩壊は防げる……と言っても、過言で
はないかもしれない。
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