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         》》》 小学校教育が危ない! 《《《

     No.43  2007/1/17  著者:福嶋隆史

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    No.43 ~「数」を増やすより「質」を向上させよ! ~

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【目 次】
(1)授業時間数を増やせば解決?
(2)教師の数を増やせば解決?
(3)では、どうやって教師の能力と質を向上させるのか?
 ◆あとがき
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(1)授業時間数を増やせば解決?


「公立学校の授業時間数 10%増加」

 おととい、こんなニュースが流れた。
 例の、内閣直属「教育再生会議(野依良治座長)」が1月下旬にまとめる第
1次報告に、「10%増加」の提言を盛りこむことを固めたらしい。

「ま~たか……」(-_-;)

 私は、呆れるしかなかった。
 彼らは、何も分かっていない。

 大切なのは、数じゃない。質だ。

 授業時間数をたかが10%増やしたところで、教師の質、授業の質が変わら
ないのであれば、何の効果もない。

 ポテトチップスのパッケージに「10%増量中」と書いてあっても、そのポ
テトチップスの味が変わらなければ、結局はほとんど価値が無いのと同じ。
 「10%増量中」と書けば、なんとなくお得な気分にはなるが、あくまでも
“気分”のレベルだ。
 本質は、変わらない。

 “気分”をよくさせてごまかそうなんて、まったく、国民を馬鹿にした提言
である。

 いや、もちろん、「増やすな」と言っているのではない。
 私とて、増やすことにはおおかた賛成である。
 しかし、順序が違う、順序が。
 優先すべきものが。

 何度でも書こう。
 優先すべきは、教師の質、授業の質だ。

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(2)教師の数を増やせば解決?

 前号で、「崩壊したクラスに校内すべての教師を“投入する”という愚策」
について書いた。
 これも、「質の向上」を軽視して「数でなんとかしよう」という愚かな発想
の1つだ。

 ただ、前号で書いたのは、あくまでも校内の話だった。

 が、この発想は、日本全体にも見られる。

 つまり、教員採用者数を増やし、1校あたりの教員数を増やせば「手厚い教
育」になる、という、短絡的で間違った考え方である。

 2000年度の、全国の小学校教員採用者数は、約 3700人。
 2006年度の、全国の小学校教員採用者数は、約12600人。

 この少子化の時代に、教師の数は3.4倍にもなっているのである。
 たった6年間で。

 もちろん、「少人数学級」を推進するためには、これは不可欠なことだ。
 (1クラスあたりの児童数を減らせば、クラス数は増え、その分だけ担任教
  師の「数」が必要になるから)

 しかし、果たしてどうだろう。
 「少人数学級」とは、それほどまでに優先的な課題なのだろうか。
 実は、「少人数学級を」という訴え自体が、やはり「数」の問題として捉え
ているのであり、本筋からずれた話なのである。

 たとえ、「20人学級」が実現されたとしても、質の低い教師が担任だった
ら、学級は確実に崩壊する。
 20人とて、立派な「集団」。
「集団統率力」の低い教師には、40人でも20人でも同じことなのである。
 私は、20人程度のクラスが荒れているのを、この目でたくさん見てきた。

 いや、質の低い教師には、10人でも無理だろう。
 大げさな話ではない。
 算数の習熟度別授業(要するにレベル別授業)などで10人程度の子だけを
相手にした授業を何度も見たが、統率力のない教師の授業は、やはり混乱して
いた。

 逆に、統率力のある教師なら、40人でも立派に授業が進む。
 個別指導だって、ちゃんとできる。

 プロ野球チームが、成績不振だからといって監督やコーチの「数」をやたら
と増やすだろうか。
 そんなことはありえない。
 むしろ、「質」の高い監督、「質」の高いコーチを雇おうとするだろう。
 それと同じだ。

 要するに、教師の能力と質を向上させることこそが、優先課題なのだ。

(教師の数を増やすために金を使うのではなく、次の(3)に示すような具体
 策を講じるためにこそ、国家予算を使え、と私はいいたい)

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(3)では、どうやって教師の能力と質を向上させるのか?

 まずは、━━【大学の授業】━━を変えなければならない。
 教師の卵である学生に対して、現場で使える教育技術を何にも指導していな
いのが現状だが、そこから改善する。

 学生に必要なのは、まず「教師とは統率者である」ということを知ること。
 「~~しましょう」ばかりではなく、「~~しなさい」と言える人間にする
こと。
 そして、「指示・発問」を明確化した模擬授業を、何度も何度も行うこと。
 模擬授業を、「授業のプロ」に批判してもらうこと。
 その中で、子どもが「燃えてくる」ような発問の仕方や語り方を学ぶこと。
 「時間を秒単位で意識した授業作り」を、何度も練習すること。
 無駄な「説明」ではなく、「繰り返し練習」によって身につけさせる方法を
学ぶこと。
 また、子どもに対する教師の「目線」の配り方を学ぶこと。
 あるいは、教室で必要になる様々な「ルール」の具体例を学ぶこと。
 ……数え上げたらきりがない。

 また、現場経験を踏ませるための━━【教育実習】━━を、現在の「1ヶ
月」から「1年」に変える。
 医師と同じくらい尊い「人間を変える」という仕事に、たったの1ヶ月の現
場実習で済ませるというのは、どうみてもおかしい。医師になるために必要な
臨床実習期間と比べてみるがいい。
 それに、1年間も実習をやれば、教師に適さない人間は、自然淘汰されてい
くだろう。

 次に、━━【採用試験】━━の問題。
 教員採用試験で、現場能力を測れないようなくだらない試験をやっている限
りは、どうしたって質が向上しない。
 最初に採用した「素材」が悪いのだから、向上するはずがない。
(では、どんな採用試験がよいのか。これについては、【小冊子】第1分冊に
 載せてある)

 そして、━━【研修】━━の問題。
 初任者研修、5年次研修、10年次研修……など、すべての教師に義務付け
られた研修から、そうでない日常的な研修までいろいろあるが、そのどれも
が、ひどい内容である。
 少なくとも「官製研修」は。
 たとえば、私が以前受けた初任者研修の例。

「いじめや不登校について、あなたならどんな方法で対処するか、初任者同士
 の5~6人のグループで、1時間話し合いなさい。そして、それを全体に発
 表しなさい」
 話し合いのあと、グループの代表者が、もぞもぞと内容を発表する。
 で、最後に、とってつけたような講義を15分ばかり講師がしゃべって終わ
り。
 何の成果も無い。

 初任者同士が話し合いをしたって、具体的で有効な解決策が出てくるはずが
ない。
 全国の教師が長年にわたり実践を重ね、風雪に耐えてきたような様々な具体
的方法は、本屋に行けば山ほど見つかるから、それを読むほうがまだ勉強にな
る。

 研修・研究については、土日も惜しまず民間団体の研究会に自主的に参加す
ることが、最善策である。
 私は、過去、少なくとも100回以上、そういった会に参加してきた。
 もちろん、私費で。

 そこで学んだすべてのことが、現場で大いに役立った。
 私が子どもたちを激変させることができたのは、すべて、そういった努力の
おかげである。
(激変の分かりやすい例は、百人一首である。詳しくはHPを)

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 この、「教師の質が下がる原因と解決策」については、
【小冊子】(第1分冊)にも詳しく載せた。

 採用試験の具体例や、私が考える採用試験の「抜本策」、そして、教師の
研究会での「現場ドキュメント」も書いた。
 ぜひ、この機会にお求めいただきたい。
 http://www16.ocn.ne.jp/~wildcard/06-mysite-mg-hanbai.html

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◆あとがき

 最初の話に戻るが、「授業時間数10%増加」のニュースを聞いて私が最初
に思ったことは、これだ。

「どうせ、その10%のうち半分以上は、くだらない行事に充てられるだけだ
 ろう」

 イベント過多!
 この現状については、第27~29号に詳しい。
 http://www16.ocn.ne.jp/~wildcard/06-mysite-abunai-bn.html

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