【子育ての この場面には この言葉】
★★★[授業ビデオ/指導法ビデオ] ダウンロード販売★★★ |
| 福嶋が執筆したショートストーリーが掲載されています。 |
|
|
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.25 2007/ 3/ 8 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今回は「ことわざ」ではありませんが、ぜひとも子どもたちに伝えたい歌。 ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 仰げば尊し[☆☆☆] あおげばとうとし ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 「あ〜、寒かったね。もう3月なのに…」 「ほんとだね…本番の日、あたし、トイレ行かずに座ってられるかな」 ミチコは、親友のサヤカと昇降口に駆け下ります。 2人は6年生。 最近は、毎日のように卒業式の練習です。 今日は、体育館で入退場の練習がありました。 靴をさっと履いて校庭へ駆け出た2人は、思いっきりハネを伸ばします。 「あ〜、外の方が体育館よりずっと、あったかいや〜!」 「ほ〜んと!」 あたたかい春の日差しが、2人の上に降り注ぎます。 もう中休みですが、まだ他の学年の子は出てきていません。 2人は、はしゃぎながら広い校庭中を駆け回りました。 ********** 中休みが終わると、ミチコたちは音楽室へ直行しました。 2人の大好きな、音楽の時間。 ただし、ここでもまた、卒業式の練習です。 「はい、みなさん。卒業式まであと少しですね。卒業式で歌う7曲の練習も、 あと少ししかできません。今日も、卒業式当日の自分を想像しながら、気持 ちを込めて歌ってくださいね」 ********** 6時間目が終わり、ミチコはサヤカと一緒に校門を出ました。 「じゃあね! ミチコ」 「うん。また明日ねサヤカ!」 ミチコは、あたたかい日差しの下を、小声で歌いながら帰りました。 ――♪泣くな 友よ 今 惜別のとき…… 森山直太朗の「さくら」です。 卒業式のクライマックスで歌う歌。 この歌詞を口ずさむだけで、ミチコは、ちょっと涙が出そうになるのでし た。 ********** その夜。 ミチコは、お風呂の中でも思わずその歌を口ずさんでいました。 食卓のお父さんがそれを聞いていたらしく、お風呂上りのミチコに話しかけ ました。 「ミチコ。さっきの歌、卒業式で歌うのか」 「え… 聞こえてたの? …そ、そう。歌うんだよ、卒業式で」 「そうか… いい歌だな」 「でしょ? お父さん、いい耳してるね!」 「いや、お前の歌がうまいってことじゃなくて。歌詞が、さ」 「なーんだ。歌詞ね。うん、あの歌詞、大好きなんだ」 「友だちとの別れを惜しむ歌……か……」 「何? なんか変? そうだ……お父さんの頃って、どんな歌、歌ったの?」 「父さんが子どものときの卒業式で、か?」 「そう」 「仰げば尊し」 「え、なに……もう1回言って?」 「仰げば尊し。 あーおーげーばー、とーおーとしー、わーがーしーのーおーん〜〜〜…」 朗々と歌いだすお父さんの声に、ちょっと苦笑い気味のミチコ。 すると、突然そこにお母さんもやってきて、一緒に歌いだしました。 「おーしーえーのー、にーわーにーもー、はーやー、いーくーとーせー……」 ********** ひととおり歌い終えた2人……満足そうです。 ミチコは、2人に尋ねました。 「なんか、意味がよくわかんない歌詞だね。わがしのおん、って、もしかして 先生に向かって言ってるの?」 「お、ミチコ、賢くなったな! そう、そのとおりだよ」 「そっか、先生に感謝する歌なんだね…」 その言葉を聞いて、お母さんも話し出します。 「いや、それだけじゃないわよ。2番は、友だち。3番は、学校とか教室に、 感謝してる歌なのよ」 「なんか、そういう歌、前あったな……なんだっけ……あ、あれだ、『ありが とう さようなら』って歌」 「ああ、あったわねえ。みんなのうたで聞いたわ、母さんも」 ミチコは、ちょっと思い切って言いました。 「仰げば尊し、っていう歌、もっとよく教えてよ」 「よ〜ろこんで!」 お父さん、お母さんは、歌詞を紙に書いてくれました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 1 仰げば 尊し 我が師の恩 教(おしえ)の庭にも はや幾年(いくとせ) 思えば いと疾(と)し この年月(としつき) 今こそ 別れめ※ いざさらば 2 互(たがい)にむつみし 日ごろの恩 別るる後(のち)にも やよ 忘るな 身をたて 名をあげ やよ はげめよ 今こそ 別れめ いざさらば 3 朝夕 馴(なれ)にし まなびの窓 蛍のともし火 積む白雪 忘るる 間(ま)ぞなき ゆく年月 今こそ 別れめ いざさらば ※別れめ……別れよう、の意 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ミチコは、思いました。 (この歌も、私たちの卒業式で歌えればいいのに……) ********** 翌朝。 「サヤカ、おはよ!」 「おはよー! ミチコ」 「あのね、きのう私ね、新しい歌覚えちゃった!」 「え? ほんと? あたしもだよ?」 「もしかして、同じ歌だったりして……」 「じゃあじゃあ、いっせーのーせ、で歌ってみない?」 「いいよ!」 「いっせーのー……」「せ!」 「あーおーげーばー……」 「あーおーげーばー……」 2人は、手を取り合って笑い出しました。 「……そこのお2人さん。今日も仲良しだね!」 担任の南先生が近づいて来ます。 「あ、先生! この歌、知ってる? せーの……」 2人が歌いだすより早く、先生が歌いだしました。 「あーおーげーばー とーおーとーしー」 「えっ、もしかして聞いてた??」と、2人。 「そういうこと〜」 「先生、いつもありがとうございます!」と、ミチコ。 「ます!」と、サヤカ。 「ハッハッハ…な〜に言っちゃってんのさ……わが師の恩、ってことかい?」 「そういうこと〜」 3人は、そのまま「仰げば尊し」を歌いながら、教室へ入っていきました… ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「仰げば尊し」の合唱を、下記から聞くことができます。 http://shofukuji.net/4aogeba.htm ――――――――――――――――――――――――――――――――――― |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.24 2007/2/23 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 蛍雪の功[☆☆☆] けいせつのこう ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ カレンダーの今日の日付に大きくバツをつけ、ショウタはため息をつきまし た。 「はぁ……期末試験……ついに、始まるなあ」 ショウタは、机に顔を伏せます。 そのとたん、眠ってしまいました。 「中学2年 数学」と書かれた問題集の表紙に、頬を乗せたまま…… 部屋の蛍光灯も、机のスタンドも、つけっぱなし。 おまけに、テレビまで。 日ごろの疲れが出たのでしょうか…… ********** どのくらい眠ったのでしょう…… しばらくしてショウタは、重いまぶたを半分開きました。 「あれ……おかしいな……」 部屋が真っ暗なのです。 (消した覚えはないんだけどな…… あ、さては、お母さんだな。また、節電 とか言って…) ショウタは伸びをして椅子から立ち上がり、のそのそと歩き出します。 ブルッと体を振るわせながら、部屋の扉を開きました。 (うぅ、……寒い…… なんだよ、暖房まで切れちゃってるぞ……?) ショウタは、階段の上から、下の階にいるお母さんに向かって叫びます。 「お母さ〜ん。勝手に電気消さないでよね〜!」 そういいながら、ショウタはまた、「あれ?」と思いました。 家中が暗いのです。階段も、1階も。 と、そのとき。 「ショウタ、大丈夫? 停電らしいけど」 お母さんの声です。 (そっか……停電だったのか……) 事情をのみ込んだショウタは、ゆっくりと部屋に戻り、部屋の隅にある懐中 電灯を手に取ると、下へ降りました。 *********** 「まいったわねえ。これからお父さんも帰ってくるのに……料理も何もできな いわね」 「ぼくだって困っちゃったよ。明日から始まる期末試験のための勉強するとこ ろだったのに」 「そうねえ……」 リビングのソファーに向かい合って座り、小さなテーブルに置いた懐中電灯 をはさんで、2人はしばらく、じっとしていました。 と、不意にお母さんが口を開きました。 「ショウタ、蛍雪の功、って知ってる?」 「けいせつ? けいさつ?」 「違うわよ……け・い・せ・つ。ホタルの光と、窓の外の雪明かりで勉強し たっていう、中国の人の話」 「ああ、歌にあるよね、それ。ホ〜タ〜ルの〜ひ〜か〜あり……って。 でもさ、ランプとかなかったのかな、その時代」 「明かりをともすための灯油も買えないくらい、貧しい人だったんだけど、ホ タルとか雪明りとかだけを頼りにして、一生懸命本を読んだんだって」 「ふ〜ん……」 ショウタは、おもむろに懐中電灯を手に取り、スイッチを切りました。 「え? なにすんの」 ちょっと驚いたお母さん。 「いや、別に……ホタルの光、窓の雪、を試そうと思って」 「ホタルなんていないでしょ。それに、雪だって、……」 と、そのとき。 窓にかかったカーテンの隙間に、チラチラと白く光るものが見えました…… 「うわっ……そんなことって、あるんだね……」 ショウタは、窓に近寄ってカーテンを押しのけます。 「どうりで寒いわけだ……」 雪です。 ふわふわと軽やかな雪が、音もなく舞っています。 庭の黒い土は、うっすらと白くなり始めています。 お母さんは、窓に近寄ると、ショウタの肩越しに空を見上げました。 「あら……月が出てたのね…」 「ほんとだ……」 ソファーに戻ると、ショウタは楽しげな顔で言いました。 「お母さん、ぼく、今夜、雪の明かりで勉強するよ」 「なに言ってんの……朝になるまでは、雪、積もらないでしょ」 「いいよ、徹夜するから」 「へぇ〜…! 珍しいことって、重なるもんね…… ま、やってみなさい。蛍雪の功を積んで、数学100点、って感じね」 ********** ショウタは、懐中電灯を持って2階へ戻ると部屋のカーテンを開けました。 水滴で塗れた窓から入る、キラキラしたかすかな明かりを頼りに、問題集の ページをめくり始めました…… (スリリングだね…) なぜだかワクワクしているショウタ。 さてさて……朝までもつのやら…… |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.23 2007/ 2/ 9 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 不言実行[☆☆] ふげんじっこう ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 授業参観。 「はい、今日はまだ15分あるからね、ちょっと難しい問題にも挑戦してもら いましょうね」 さなえ先生の言葉に、「え〜?」「やだ〜」と、ブーイングがチラホラ…… すると…… 「いいよ、先生! オレ、算数の難問とか、すごく得意だから」 「なに言ってんだよタケシ。この前もそんなこと言って、間違えたじゃん」 「……」 タケシは、友だちのユウキの言葉にちょっと照れ笑いしながら、後ろを振り 返ります。 お母さんは、軽く眉間にシワを寄せながら、タケシに視線を送っています。 「いや、絶対、今度は正解できるよ」 まだ強がるタケシ。 「はい、タケシくん。 問題を見る前から、そんなこと言っちゃっていいのかな?」 問題のプリントを配りながら先生が小声でそう言うと、教室中から、明るい 笑いが起こりました。 タケシくん、またまた照れ笑い。 ********** シーンとする教室に、鉛筆のコツコツという音だけが聞こえます。 「……はい。そろそろ、できたかな? さっき教えた計算の仕方を応用すれば、できるはずなんだけどね」 4〜5人の子が、鉛筆を置きました。 「さあ、そろそろいいかな。問題が解けた人は、先生のところに持っていらっ しゃい」 最初にさっと立ち上がったのは、ユウキでした。 先生にノートを見せます。 「う〜ん、残念」 「え〜、ちがうの? おかしいな…」 バツだったらしいユウキくん。戸惑いながら椅子に戻りました。 ユウキくんのお母さんも、残念そうに苦笑しています。 続けて、タケシです。 「オレ、絶対自信ある」 タケシのお母さんはもちろんのこと、まだできていない子たちも、ちょっと 気にして見守っています。 先生が、小声で言いました。 「残念」 教室のあちこちから、軽いため息が漏れました。 「……」 タケシは、悔しそうに席に戻ると、片手で頭をかかえながら、再び考え始め ました。 そのときです。 今まで一言もしゃべらずに鉛筆を動かしていたマユミが、すっと席を立ちま した。 いつも、さほど成績がよいわけでもなく、目立たない子でしたので、少し教 室がどよめきました。 「お〜、マユミできたの? すげ〜」 「でもまだ正解かどうかわかんないよ」 「ま〜ね…」 マユミが出したノートに、先生は……大きくマルをつけました。 「正解! 第1号!!」 今度は、教室中が大きくどよめきました。そして、短いけど力強い拍手が、 子どもたちや保護者の間から沸き起こりました。 「マユミさん、すごいわね。不言実行、ってところね」 さなえ先生は、席にもどったマユミに近づくと、マユミの頭を軽くなでまし た。 マユミは嬉しそう。 後ろで見ていたマユミのお母さんも、ちょっと誇らしげです。 ……… 結局そのあと、タケシも他の子達もみんな正解しましたが、先生やお母さん たちからのヒントをもらったあとでした。 ********** 夕飯をテーブルに並べているお母さんに、タケシがたずねました。 「ふげんじっこう、って何?」 お母さんは、手を止めて椅子に腰掛け、タケシに向かい合って言いました。 「絶対できるとか、勝てるとか、うまくいくとか、そういうことを先に言わな いで、だまって成功させる人のことを言うのよ」 「そっか……う〜ん…… ……ま、次はがんばるからさ」 「え? 言葉の意味、分かったの?」 (やれやれ……)お母さん、軽くため息。 「はい、ごはんよ」 「いっただっきま〜す!!」 いつもと同じ元気な声につられて、つい笑顔になる、お母さんでした。 |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.22 2007/1/25 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 天知る、地知る、子知る、我知る[☆☆] てんしる、ちしる、ししる、われしる ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 5年生のリョウは塾の帰り道。 親友のコウタと一緒に、コンビニに入りました。 いつものパターンです。 2人は、1年後の中学受験に向けて、毎晩のように遅くまで塾通い。 今夜も、もう9時半近くになってしまっています。 気温もぐっと下がってきました。 「あ〜、腹減ったなぁ…今日は何にしよっかな…」 コウタが、真っ先にパンコーナーに向かいます。 リョウは、あとからついていきます。 「ぼくはアンパンでいいよ」 「なんだ、またかよ?! おまえ、いつもアンパンだな、リョウ」 「いいでしょ、別に」 「まあ、ダメとは言わねーけどさ……オレは、このカレーパンと、このコロッ ケパンと、……」 次々とパンの入った袋を手に取るコウタ。 「え? コウタ、そんなに食べられるの?」 リョウは、あっけにとられて、言いました。 「がんばって勉強したから、腹減ってんの!」 「それじゃ…なんか、ぼくがあんまり勉強がんばってないみたいじゃない?」 「うるせーな、お前ももっと食えばいいだろ!」 コウタは、疲れと空腹のためか、ちょっと投げやりです。 「もっと食えって言われてもさ、ぼく、お金ちょっとしか持ってないから」 「じゃあ……盗んじゃえば」 コウタが、小さな声でサラッとそう言うのを聞いて、リョウは耳を疑いまし た。 目を丸くして、コウタの顔を見つめます。 じっと自分を見ているリョウに、コウタが再び言いました。 「盗んじゃえば、って言ってんの」 「…な、なに、言ってんの、コウタ…」 1年生のときから仲良しだったはずのコウタの顔が、なんだか急に、初めて 会う他人のように見えました。 「ほら…! 今なら店員が奥に入ってるから急げば行けちゃうよっ」 コウタが、いたずらっぽくささやきます。 小さく口を開けたまま何も言わないリョウに、コウタが小さな声で続けま す。 「ハハ……臆病なヤツだな……オレなんか、2年生のとき、ガムとか盗んだこ と、あったんだぜ」 「え、え?! うそでしょ。まさか」 コウタは、いくつかのパンの袋の端を片手でまとめて掴み、レジに向かって 2〜3歩、歩き出します… そしてリョウを振り返り、ニヤッと笑って答えました。 「うそだよ、うそ」 しかし、リョウは、それを聞いても安心できませんでした。 コウタのその言葉こそが「うそ」なんじゃないか…そんな気がしたのです。 リョウは、なんだか体がほてってくるのを感じました。 「じゃ、オレ、これ買ってくるから……なんか、おまえ、顔赤いぞ?」 「ぼくは、盗みなんて、しないからね。 店員さんは見てないけど。 神様も地球も知ってるんだ。コウタだって知ってるし…ぼくだって知って る」 「……は…?」 リョウの突然の言葉に、今度はコウタが目を丸くしています。 「人が見てなくたって、ぼくには、そんな悪いこと、できないから。 いつも、お母さんにそう言われてるから」 コウタは、何度かまばたきしながらそこに立ち止まってリョウを見つめてい ましたが、不意に背中を向け、黙ってレジに向かいました。 店の奥からあくびをしながら出てきた若い店員に数百円を払うと、コウタ は、振り返ることなく、1人で自動ドアの外へ出ました。 リョウは、アンパンをその場にそっと戻し、唇をかみしめていました。 ********** 翌朝。 リョウが教室に入ると、いつもギリギリのはずのコウタが、もう椅子に座っ ています。 「リョウ、きのうはごめんな。先に帰っちゃって」 リョウは、カバンを机に乗せて突っ立ったまま、すぐ後ろの席のコウタにほ ほ笑み返しました。 「いいよ。ぼくこそ、急に変なこと言っちゃったし」 「変じゃないよ。 天知る、地知る、子知る、我知る、だろ」 その言葉を聞いたとたん、リョウは、きのうの夜から続いていた緊張が一気 にほぐれていくのを感じました。 「そう、それそれそれ!……なんだ、知ってたの?!」 「きのう、父ちゃんに習ったよ」 「ふ〜ん…」 そこに、担任の先生が入ってきました。 「今日は体育館で集会です、早く移動しなさい」 リョウは、ふざけてコウタの背中を押しながら、廊下に出ます。 「あのさ、コウタ…父ちゃんに、どうやって聞いたの?」 「神様と地球が知ってるって話、知ってる?って」 「なんかよくわかんないな……あ、あとさ、ガムのこと……ほんとなの?」 「ウソだって言ったろ? お前の勇気を試そうと思っただけだよ」 「だよね、やっぱり」 廊下の窓から差し込む冬の日差しが、コウタの顔を照らし出しています。 その顔を眺めながら、リョウは、心の中でもう一度つぶやきました。 (うそ…だよね) ---------------------------------------------------------------------- 「子知る」の「子」は、「し」=「あなた」(二人称)の意味。 天も知っている、地も知っている、あなたも知っている、私も知っている。 誰も見ていないと思っても、隠し事は必ず露呈される、ということ。 「四知」とも言う。(中国の故事成語) |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.21 2007/1/7 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 文武両道[☆☆☆] ぶんぶりょうどう ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 「中田英寿って、ほんとすごいよね、お母さん」 「え? なにが?」 「なにがって、ほら、イタリア語ぺらぺら」 家電量販店に並んだテレビを眺めつつ、母と娘が話しています。 画面には、インタビューにイタリア語で受け答えしている様子が映し出され ています。 「そうねぇ。サッカーだけじゃないのね。まさに文武両道ね」 「ぶんぶりょうどう……きのう中学校で習った」 「ほんと? じゃあ、どういう意味か言ってみて」 「えっとね……勉強も運動もがんばる、ってこと」 「う〜ん、まあ、正解かな」 ずらっと並んだテレビが、一斉にCMに変わりました。 二人は、その場を離れます。 「あなたも見習いなさいよ」 「見習うって、中田を? そんなの無理よ、無理。バスケ部が忙しくて! あたしは、“ぶんぶ”の“ぶ”だけで精一杯」 「バスケ部…? まさかあなた、“ぶんぶ”の“ぶ”を部活の“ぶ”だと思っ てるんじゃないでしょうね?」 「えっ?! そ…そんなはずないでしょ。ちゃんと分かってるよ」 「じゃあどんな字?」 「えっとね……あれは……」 「武道の武でしょ」 「ああそう、それそれ。…っていうか、先に答え言わないでよ」 「何言ってんの。教えてあげたのに… ま、あなたも、せめて英語ぐらいがんばってよね。 イタリア語まで勉強しろとは言わないからさ」 「…あたしは、日本語だけで精一杯!」 「やれやれ…」 …苦笑する母でした。 |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.20 2006/12/24 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 親しき仲にも礼儀あり[☆☆] したしきなかにもれいぎあり ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 今日は元日。 食卓には、お雑煮のいい香りがただよっています。 4年生のマオが、やっと起きてきました。 「いいにおいで目が覚めちゃった……」 「その前に、あいさつがあるでしょ、あいさつが」 「おはよー」 「ちがうちがう。今日はそれだけじゃだめなのよ」 お母さんの言葉に、はてなマークのマオ。 「あけまして、おめでとーございまーす」 先にテーブルについていた弟のケンが、得意そうに言いました。 「あ、そっか。…新年おめでとう」 マオは、ちょっと照れながら言いました。 「親しき仲にも礼儀あり、だぞ。マオ。ちゃんと、あけましておめでとうござ います、って、頭を下げながら言いなさい」 ちょっと厳し目のお父さん……マオに言い直すように促します。 「え〜、そんなのはずかしいじゃん」 「1年に1回くらい、ちゃんとしなさい」 「……じゃあ、ケンは言ったの?」 「言ったよ。なあ、ケン」 「うん!」 「じゃあさ、ケン、あたしと一緒に、もう一度言ってくれる?」 「え〜、なにそれ〜」 「いいじゃん、いいじゃん」 お母さんは、2人のやりとりを楽しそうに眺めながら、お雑煮の入った器を テーブルに運んでいます。 「せーの」 「……」 「ほら、いっしょにやってよ、ケン」 「せーの……あけまして、おめでとーございます」 「…ございます」 「ケン…今、わざとずらしたでしょ」 「へへ…」 「はい、おめでとう」 お父さん、満足げです。 「これでやっと、お雑煮食べられるね」と、マオ。 「いっただっきまーす」 今度は2人ともぴったり合いました。 ********** 数分後。 郵便屋さんのバイクの音がします。 「あっ、年賀状来た!」 マオは、さっと箸を置くと、玄関に走っていきました。 ケンも、あとを追いかけます。 「ほーら! マナーが悪いぞ…!」 「2人とも、もどりなさい!」 お父さんとお母さん、元旦早々から、ため息です…… |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.19 2006/12/8 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 少年老い易く学成り難し[☆☆☆] 一寸の光陰軽んずべからず[☆☆☆] しょうねんおいやすくがくなりがたし いっすんのこういんかろんずべからず ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 6年生のリエは、クリスマスプレゼントの候補を紙に書いています。 (ブーツ……イヤリング……新しい帽子……) 「ずいぶんオシャレに気を使うんだな、まだ小学生のくせに」 リエは、中3の兄・コウタの偉そうなセリフに、カチンときました。 「はぁ? 偉そうに言わないでよ。あと3ヶ月すれば中学生なんだから」 「それでもまだ中1だろ」 黙って兄をキッとにらんでいるリエに、ママが言いました。 「まあまあ、そんなにイライラしなくても。 リエには、きっとサンタさんがいいプレゼント持ってきてくれるわよ」 「うわ、おまえ、まだサンタとか信じてんのかよ?」 「はぁ? 信じてるわけないでしょ」 フフンと鼻で笑って、コウタは自分の部屋に上がってしまいました。 「リエ、サンタさん信じてないの?」 「ママ?…もう、馬鹿にしないでよ。あたしはもう中学生になるんだよ? サンタなんて信じてるわけないでしょ」 「へ〜。じゃあ、そのブーツとか、誰に頼むの」 「ママとか…パパとか」 それを聞いたママは、なぜかクスクス笑い出しました。 「なにがおかしいの?」 「なにがって…… リエ、いつの間にサンタさんに“さん”付けしなくなったのかな、と思って たら、なんだかおかしくて…」 ママはまだ笑っています。 「別に、おかしくないでしょ…… そんなことより、ママさぁ、ブーツとか買ってくれる…?」 「ママが買うんじゃないのよ、サンタさんよ、サンタさん」 そう言って大笑いしているママに呆れたリエは、リビングのソファーにゴロ ンと横になりました。 「もうすぐ中学生かー……」 リエが、天井を見ながらつぶやきます。 「そう、もうすぐ中学生」 ママは、同じことを繰り返します。 「勉強とか、大変になるのかなあ…」 「勉強、大変になるわよ」 「…ほんと?」 「ほんと」 「やだな」 「少年老い易く学成り難し」 「急に何言ってんのママ」 「少年はすぐ年を取っちゃうから、日々大切に勉強しなさい、ってこと」 「あたし少年じゃないし」 「少年っていうのは、若い人、っていう意味もあるのよ。少女も含めてね」 「……」 「一寸の光陰軽んずべからず」 「まーたまた…今度はなに?」 「だから、ちょっとした時間でも、大切にしなさい、ってこと」 「はいはいはい…」 そう言いながら身を起こしたリエは、背伸びをしながら続けます。 「…宿題タイム…ね」 「ま、そういうこと」 「じゃあ、これよろしく」 リエは、紙切れを折りたたんでママに手渡すと、自分の部屋に上がっていき ました。 紙切れの一番上には、スカイブルーのペンでこう書いてありました。 「きぼうプレゼントいちらん」 (きぼうくらい漢字で書きなさい…) 苦笑しながら、ママは紙切れを財布に差し込みました。 (でも、リエも、この6年間、がんばってきたのよね… いっそのこと、6年間のご褒美に、これ全部買ってあげちゃおうかな) そんなことを考えながら、コウタの弁当の下ごしらえを始める、ママでし た。 |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.18 2006/11/23 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ ・寝る子は育つ [☆] ・果報は寝て待て [☆☆] ・早起きは三文の徳[☆☆] (……今回はトリプルです!) ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 1年生のユウジが、ゲームに夢中になっています。 ソファーに横になりながら高く上げた両手には、大事そうにゲーム機が握ら れています。 「ユウジ! 時計見てごらんなさい。もう10時よ! 早く寝なさい!」 お母さんが、少し厳しい声で言いました。 ユウジが答えます。 「もう…っていうか…まだ10時じゃん…」 ゲームに気をとられているせいか、つぶやくような小さな声。 お母さん、呆れ顔です。 そこへ、ユウジの姉のミチコがやってきました。 ユウジが寝転がっているソファーの端に、ちょこんと座ります。 手には、同じゲーム機……でも色はピンク。 ピッ……電源が入りました。 「ミチコもやるの?! 学校の先生に、この前言われたばかりでしょ? 3年生は9時間くらい寝なきゃだめだって」 「え〜。でももうすぐ4年生だしぃ〜」 「へりくつ言わないの!」 ********** 2人は、10分経ってもやめようとしません。 遅い食事で黙々と箸を動かしていたお父さんが、言いました。 「あのなあ、ユウジ、ミチコ。 【寝る子は育つ】って言葉知らないのか? よく寝ないと、大きくなれないんだぞ!」 2人は、その言葉に“ぴくっ”としました。 2人とも、クラスの「背の順」では前の方。 「大きくなれない」のセリフには、ちょっと敏感です。 「もう一度言うぞ。寝る子は育つ! 今すぐ寝れば、たぶん朝には背が1ミリ伸びてるぞっ」 「わかった、わかったからさ……」と、ユウジ。 「セーブするまで、もうちょっとだから」と、ミチコ。 お父さんのちょっとした冗談も、なんだか無視されてしまったようです…… お父さん、内心(やれやれ)の呆れ顔。 ********** ようやく、2人はベッドに入りました。 でも、まだ部屋の電気がついています。 お母さんが入ってきて、言いました。 「【果報は寝て待て】っていう言葉知ってる?」 「知らない。…お父さんもお母さんも、ほんと、ことわざが好きだね…」 と、ミチコ。 お母さん、苦笑しながら答えます。 「寝ているうちに、いいことが起こる、ってことよ」 「ふ〜ん。じゃあ、明日の算数のテスト、無くなるかな?」 お母さん、またまた呆れ顔。 「無くなるわけないでしょ! ……でもちょっとは、得意な問題が多く出るんじゃない?」 ふと二段ベッドの下を見ると、ユウジはもう眠っています。 (やっぱり、まだ1年生ね……)お母さんは、ちょっと目を細めます。 そしてそのまま電気のスイッチを切り、部屋を出ました。 「おやすみ」 「おやすみなさーい」 ********** 翌朝。 「おかあさ〜ん。起・き・て!」 「おはよ〜ぉ」 お母さんは、ミチコとユウジの大きな声で、重いまぶたを上げました。 「なぁ…に……まだ…5時半じゃないの…?!」 「【早起きはさんもんのとく】って言うでしょ!」 「それ…お母さん、教えてないけど…?」 「先生が言ってた」 「あ……っそう……」 やっとのことでふとんから半身を起こしたお母さんに、ミチコが続けます。 「ミチコ早起きしたから、今日の算数のテスト、3問できるようになるよね」 「おいおい……さんもんって、そういう意味じゃないだろ」 隣で寝ているように見えたお父さんが、口をはさみました。 「なんだ、お父さん起きてたの」と、ユウジ。 「じゃあ、どういう意味なの」と、ミチコ。 朝から呆れ顔が尽きない、お母さんとお父さんでした。 ---------------------------------------------------------------------- 注: 「早起きは三文の徳」…早く起きると、少しのお金でも得をする、が原義。 「徳」は、ここでは「得」と同じ意味。 江戸時代には、寛永通宝1枚が1文だった。 ---------------------------------------------------------------------- |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.17 2006/11/11 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 鉄は熱いうちに打て[☆☆] (てつはあついうちにうて) ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 星のまたたきがくっきりと見える季節になりました。 日曜日、外食に出た帰り道。 夜空を見上げながら、秋子が言いました。 「あの星、きれいだね、お母さん。なんだか、赤く光ってるように見えるよ」 「あら、秋子、よく気づいたわね。あの星はね、ほんとに赤いのよ」 「なんていう星?」 「え〜っと、あれはね……」 お母さんが困っていると、少し後ろを歩いていたお父さんが、助け舟を出し ました。 「あれは、ベテルギウスだろ」 「ああ、それそれ。オリオン座の」 と、お母さん。 娘の前でちょっと知識をみせて名誉挽回、と思ったのですが…… 「オリオン座は知ってるよ」と秋子。 「あ、ほんと……? よく知ってたわね」 お母さん、残念。 ちょうどそのとき、信号が赤に変わりました。 「信号も赤いね、お母さん」 「あ、ほんとだね」 「あのさ、お父さん。べテル…なんとかって、どのくらい大きい星なの?」 「直径が太陽の650倍もあるんだよ」 「へ〜……! すごいね」 (私には質問してくれないのね…… それにしても、お父さんはなんでそんなことも知ってるのかしら……) 内心苦笑のお母さんでしたが……少しして、不意に口を開きました。 「ねえ、秋子。星のこと、もっと知りたい?」 「うん……知りたい」 「じゃあさ、今度の日曜は、プラネタリウムに行ってみようか?」 「それって、なあに?」 「ま〜るい天井に星がたくさん映ってて、星の名前とかいろいろ学べるのよ」 「面白そう!」 目を星のようにキラキラさせながら、秋子がこたえました。 お父さんは、後ろから、不思議そうな目でお母さんを見ていました。 ********** 秋子がベッドに入ったころ、缶ビールを傾けながらお父さんが言いました。 「いまどき、プラネタリウムなんてあるのか?」 「今からネットで探すのよ。きっとあるわよ。【鉄は熱いうちに打て】って言 うでしょ。こういうのは、興味を持っている今が、一番のチャンスなんだか ら。ね」 「熱いうちに……か。ま、そうだな。それにしても、どこにあるかも知らない のに約束しちゃったのか?」 「まあね。……じゃ、早速今から探すから」 お母さん、勇んでパソコンに向かうのでした…… さてさて。 今度は、ちゃんと名誉挽回できるのでしょうか。 |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.16 2006/10/29 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 千載一遇[☆☆☆] (せんざいいちぐう) ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 5年生のショウタのクラスでは、秋の発表会で劇をします。 読書好きな女の子の提案で、ミヒャエル・エンデの『モモ』を劇にすること になりました。 脚本は先生が作ってくれましたが、演ずるのは当然、子どもたちです。 主役のモモは、その女の子になりました。 脇役も、ほぼ決まりました。 でも、残りひとつが、なかなか決まりません。 「あとは、ベッポだけなんだけどなあ」 先生が教室で呼びかけます。 「掃除人の役なんてやりたくないじゃん、ふつう」 クラスのヤンチャ坊主、アキラが言いました。 道路掃除夫・ベッポの役が決まらないのは、確かにそれも理由でした。 が、むしろそれよりも、「演技好き」で「目立ちたがり」の子が出そろって しまい、役者希望の子がもう1人も残っていないというのが本当のところでし た。 あとはみんな、小道具だの照明だの…というわけです。 と、そのとき、ミチヨが言いました。 「ショウタくんとか、どう? いつも掃除がんばってるし……」 その意外なことばに、ショウタはドキッとしました。 ショウタは、人前で話すのが苦手です。 授業中に手を挙げたことも、ほとんどありません。 指名されても発言できないことの方が多いくらいです。 演技なんて、できるはずない……そう思いました。 でも、ミチヨは嫌がらせで推薦したわけでもなさそうです。 ミチヨはショウタの幼馴染で、女子の中では仲良しな方でしたから。 ショウタは困ってしまいました。 「ショウタ、どうだ? やってみないか?」 先生が言いました。 数人の子も、言いました。 「やってみれば?」「たまには活躍しなよ」 でも、結局ショウタは、イエスともノーとも決められませんでした。 あしたまでに返事をすることになりました。 ********** 浮かない顔をしているショウタに、お母さんが声をかけました。 「ショウタ、どうしたの?」 ショウタは事情を話しました。 「そうなの〜。ミチヨちゃんも大胆ねえ」 その言葉を聞いて、ショウタはちょっといぶかしげな顔をしました。 そんなショウタを気にせずに、お母さんが続けます。 「ショウタ、それ、千載一遇のチャンスかもよ?」 「え……? なに? 洗剤?」 「せんざい……って、そのせんざいじゃないわよ。 1000年に1回くらいの大チャンス、ってことよ」 なぜこれが、そんな大チャンスになるのか、ショウタにはわかりませんでし た。 でも、1000年という数字を聞いて、ショウタは不思議とやる気が湧いて きました。 ********** 「じゃあ、ショウタに決定!!」 「イェ〜イ。がんばれよ、ショウタ」 「ファイト〜」 翌日、ベッポの役を引き受けたショウタは、クラスの友だちから励まされま した。 こんなに励まされたのは初めてのような気がして、照れ笑いが止まりません でした。 ********** 何日もの練習のあと、ついに劇の本番がやってきました。 ショウタは、その寡黙さ・朴訥さがハマリ役だったようで、ベッポにぴった りの演技をしました。 「ショウタ、なんかわかんないけど、いい感じだったぜ」とアキラ。 「ほんとほんと。やっぱり、やってよかったでしょ」とミチヨ。 ショウタは、またまた照れ笑い。 そしてまた、自分にもこんなことができるんだ、という思いが、ショウタを 一層励ましてくれるのでした。 とはいえ、ショウタは内心つぶやきました。 「やっぱり、1000年なんておおげさだよ……せいぜい10年くらいかな」 いえいえ。10年でも十分ですよね。 このあとからショウタは、授業中に手を挙げる回数が少し増えたそうです。 |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.15 2006/10/19 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 実るほど頭の下がる稲穂かな[☆☆] (みのるほどあたまのさがるいなほかな) ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 「はい、この問題の答え、分かる人?」 ――ハイ、ハイ、ハイ、ハイ! シンジも、ケンタも、ユミコも、アヤも、みんな手を挙げています。 でも、サトルは手を挙げませんでした。 (ぼくには分かんないや……) 苦い思いをしながら、サトルは黙って教科書を眺めていました。 ふと見ると、エミも手を挙げていません。 (エミって、本当はできてるはずなのに、どうしていつも手を挙げないんだろ う……) 「はい、それじゃあ、……エミさん。答えてください」 「え〜、また当ててくれないの〜?」 ケンタから、不満の声。 「先生は、毎回手を挙げてくれる人だけじゃなくて、ほかの人にも答えてほし いんですよ」 エミは、控えめに、でもよく聞こえる澄んだ声で答えました。 「856です」 「はい、正解! すばらしい!」と先生。 「あれ? オレ、間違ってた……先生、当ててくれなくてありがと〜ぉ」 ケンタのおどけた言葉で、クラスに笑いが起こりました。 「はい、結局、正解だった人はどのくらいかな? 手を挙げてごらん」 実は、ハイハイと手を挙げていた子は、全員間違えていました。 正解したのは、エミと、ほかの2人だけでした。 「この問題はね、ひっかかりやすいから、気をつけるんですよ」 サトルも、残念ながら正解できませんでした。 でも、そのことよりも、エミのことがなんとなく気になりました。 (エミって、頭がいいだけじゃないよなぁ……) *************** サトルは、家に帰ってから、そのことをお母さんに話しました。 「エミってさ、なんか、大人だよね」 「エミちゃん? そうね、あの子はしっかりしてるわね」 そう答えたあと、お母さんは黙って洗濯物をたたんでいましたが、しばらく して、ふと手をとめて言いました。 「サトル、この言葉知ってる? “実るほど頭の下がる稲穂かな”」 「イナホカナ? なにそれ」 「え? 稲穂は知ってるでしょ?」 「ああ……あの、稲の、米がつく部分ね」 「そう。米がたくさんつけばつくほど、重くなって下に垂れ下がるでしょ? それと同じで、いろんなことを学べば学ぶほど、頭が下がるってこと」 「頭が下がる?」 「挨拶したりお礼したりするとき、頭を下げるでしょ」 「それが何なの」 「う〜ん、だから……要するに、謙虚になるってこと」 「けんきょ?」 「自分の力を見せびらかしたり、エラそうに自慢したりしないってこと」 「そっか……」 サトルは、エミを思い浮かべました。 (たしかに、エミがエラそうにしてるのも、自慢してるのも、見たことないな あ。) 「サトル、エミちゃんのことが好きなの?」 「えっ?!……な、なにいってんの」 お母さんの突然の言葉に戸惑うサトル。 「これ、ぼくのだね」 サトルは自分の洗濯物を持って、部屋に逃げ込みました…… |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.14 2006/10/6 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 温故知新[☆☆☆] (おんこちしん) ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 「あ〜〜〜、わけわかんないよ…」 マリは、古典の教科書を机の上に放り出しました。 「なんでこんな古い日本語を“翻訳”しなきゃいけないの??」 ひとりごとのようにつぶやいたその言葉でしたが……帰宅したばかりのお父 さんの耳に入ったようです。 マリの部屋の扉をノックして、お父さんが言いました。 「なんだ、古典か?」 「そ〜」 「ちょっと見せてみろ」 「お父さんわかるの?」 マリが扉を開けて顔をのぞかせました。 教科書を受け取ったお父さん。 パラパラとめくっていましたが、すぐにパタッと閉じました。 「な〜んだ、やっぱりわかんないんじゃないの」 そんなマリの言葉に小さく肩をすくめると、お父さんは言いました。 「温故知新」 「え、なに?」 「おんこちしん」 「なにそれ」 「古きをたずねて、新しきを知る」 「だから、なにそれってば」 「古い本でも、読んでいると新しい発見があるもんなんだよ」 「ふ〜ん……だといいけど。 ま、いいや……もう勉強やりすぎて疲れたから寝るね」 「どうぞどうぞ」 お父さんはスーツの上着を脱ぎながら、苦笑いしました。 *********** 翌日。 マリは高校の図書室にいました。 放課後、友だちのエミが調べ物をするというので、一緒に来たのです。 「図書室って、なんだか古い本ばっかし。 駅前の本屋の方が新しい本がたくさん売ってて、面白いよね。 ねえ、エミ、そう思わない?」 「うん。でも、この本意外と面白そう……」 「え〜! それが?」 マリでなくとも思わず大声を出してしまうほど、その本はボロボロでした。 『近未来社会における女性像』1970年初版。 「この本、借ります」 エミは、図書の先生に声をかけました。 *********** 校門を出た2人。 「あんまり面白そうじゃなかったけどなあ」 と、マリ。 「まあね。でも、1970年からみた近未来って、今ぐらいでしょ? なんか、興味ない? 30年以上前の人が予想した“女性像”とかって」 「う〜ん……」 「古い本って、結構面白いこと多いよ」 「じゃあ古典も面白いと思う?」 「う〜ん……意味さえわかればね」 「賛成〜」 マリは、ちょっとほっとしました。 でも、いつもよりもエミの横顔が賢く見えた、帰り道でした。 |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.13 2006/9/24 ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 善は急げ[☆☆] (ぜんはいそげ) ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 塾の帰り道。駅のホーム。 前を歩いているおじさんが、何かを落としました。 (あっ…) 俊輔は、足を止めてそれを拾い上げました。 どうやら、小さなメモ帳のようです。 おじさんは、落としたことに気づかずに、どんどん遠のいていきます。 (あ、…どうしよう) メモ帳を手にしたまま、俊輔は動けませんでした。 …知らないおじさんに後ろから声をかけるなんて、ちょっと… そんな恥ずかしさが、俊輔の足を止めました。 その間ほんの10秒くらいでしたが、おじさんはエレベーターの中に消えて しまいました。 (困ったなぁ…) 俊輔は結局、それを改札の駅員に預けて、帰りました。 ********** 夕食のとき、俊輔はそのことをお母さんに話しました。 お母さんは言います。 「すぐ追いかけて、渡してあげればよかったのに」 「…でも……すぐエレベーターに乗っちゃったんだもん」 「少しは時間があったでしょ」 「…うん…」 「善は急げ、っていう言葉知ってる?」 「知らないけど…」 「いいことは、チャンスを逃さないうちにすぐにやったほうがいい、ってこと よ」 「……」 (今頃あの人、メモ帳がなくて困ってるかなあ……) そう思うと、俊輔は暗い気持ちになりました。 箸を動かす手が止まりました。 「でもまあ、駅員さんにちゃんと預けてきたんでしょ? それなら大丈夫よ、 きっと。それだけでも、俊輔はえらかったと思うよ」 お母さんのその言葉に、ちょっとほっとした俊輔。 (善は急げ、か……今度はきっと……) そう思いながら、湯気の立ち上るご飯を、たくさん口に詰め込むのでした… |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.12 2006/9/14 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 失敗は成功のもと(失敗は成功の母)[★] (しっぱいはせいこうのもと(はは)) ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ まりちゃんは6歳。 おうちの近くのスーパーへ、1人でおつかいに行きました。 恥ずかしがり屋のまりちゃんは、本当はおつかいなんてイヤでした。 お店の人とお話するなんて、ドキドキしてしまいます。 でも、お母さんが、こんなふうに言うのです。 「もう1年生なんだから、まりちゃんも1人でおつかいくらい行けなくちゃ」 だから仕方なく、出かけました。 「お肉だけ買えばいいからね」 「…は〜い…」 ********** 「お肉のコーナー」で、お肉を選びました。 いつもお母さんが選んでいるのと同じものを選びました。 お母さんと一緒に来たとき、いつもお母さんがそのお肉を手にとっているの を、まりちゃんはちゃんと覚えていたのです。 でも、値段までは知りませんでした。 (このお肉、いくらだろう……) そう思って、近くの札を見ると、こう書いてありました。 〜セール〜 ☆ 100g 100円!☆ (なんだ、100円か。じゃあ、もっとたくさん買えるよね。 だって、今日は500円持ってきたんだから。 たくさん買っていったら、お母さんよろこぶかも…) まりちゃんは、お肉のパックを5つかかえて、レジに並びました。 自分の番が来ました。 どんどん、ドキドキしてきました。 ピッ…ピッ…ピッ… レジの音が鳴ります。 ドキ…ドキ…ドキ… まりちゃんの心臓も鳴ります。 「はい、1536円になります」 「……?!」 まりちゃんは、声も出ませんでした。 急に、のどがカラカラになってくるのを感じました。 キュロットの右ポケットには、500円玉1つしか入っていません。 とっさに左ポケットにも手を突っ込んでみましたが、やっぱり、500円玉 1枚しか持っていません。 どうしよう……お母さん…… まりちゃんは、泣きたくなりました。 ドキドキが、さっきの10倍くらいになりました。 そのとき、レジのお姉さんが、何かを言いました。 「もしかして、1つでよかったのかな?」 その言葉の意味が、まりちゃんにはよくわかりませんでした。 でも、すぐにお姉さんがにっこりして、 「これ、1パック312円だから、あとのはお姉さんがもどしておくね。 はい、じゃあ、312円になります」 と言うのを聞いて、なんとなく意味がわかったような気がしました。 (よかっ…た……) ********** 「ちゃんと買ってこれたわね〜。 まりちゃん、えらかったね!」 1パックの肉を袋から取り出しながら、お母さんが頭をなでてくれました。 まりちゃんは、おつりの小銭を手渡しながら、話し出しました。 「はじめ5つ買おうと思ったんだけどね、そしたらすごく高くてね……」 そこまで話して、まりちゃんは、また泣きそうになりました。 まりちゃんは、お母さんのエプロンに顔をうずめました。 ********** 話を詳しく聞いたお母さんは、まりちゃんの涙をぬぐいながら言いました。 「失敗は成功のもと、っていう言葉、知ってる?」 「……?」 「最初うまくいかなくても、次はきっとうまくいく、っていうことなのよ」 お母さんは、まりちゃんに笑顔で話してくれました。 よくわからなかったけど、お母さんの笑顔を見ていたら、さっきまでのドキ ドキがすっかりなくなっているのに気がつきました。 (よかっ…た……) ********************************************************************** お分かりとは思いますが念のため解説。 札には「100g 100円」とありましたが、実際のパックの中身は、 「312g 312円」だったりしたわけです。 |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.11 2006/9/3 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 勝って兜の緒を締めよ[★★] (かってかぶとのおをしめよ) ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 二郎は、持ち前の勝負強さを発揮して、次々と勝ち上がりました。 剣道の県大会。 いよいよ、次は準決勝です。 「初参加なのに、たいしたもんね…」 同じ高校の剣道部の美鈴が近づいてきて、声をかけます。 美鈴は、女子の部・2回戦で惜しくも負けてしまいました。 「お前の分も、勝たなくちゃいけないからな」 二郎は正座して「面」を外しながら、気取った微笑を返しました。 「……いいよ、二郎は二郎の分だけがんばって」 美鈴は、うれしさ半分、切なさ半分でした。 (負けちゃったあたしは、もうどうしたって勝てないんだから……) そのとき、すぐ後ろの座席から、美鈴のお父さんが声をかけました。 「おい、二郎君! 美鈴の分も、ちゃんと勝ってくれよ!」 どうやら、やりとりを聞いていたようです。 美鈴は、小さくため息をつきました。 「お父さんはいいから。大声出さないで!」 「勝って兜の緒を締めよ、だぞ。いいか。油断するなよ! これから、トーナメント1試合目を始めるつもりでいけ!」 「わかりました、お父さん」 (なにが“おとうさん”よ……まったく…) 美鈴は、そう思いながらも、心の中でつぶやきました。 (そういえば…いつもお父さん言ってたよね… 勝って兜の緒を締めよ…って。 今日のあたし、1回勝って油断しちゃったんだ…きっと) ********** そして準決勝が始まりました。 二郎は、鮮やかに二本先取し、ついに決勝進出を決めました。 「やったぞ、二郎君!」 美鈴のお父さんが叫びました。 「ありがとうございます。でも、これからですから」 二郎は、試合前よりも幾分低く落ち着いた声で言いました。 「すごいね。見直しちゃった」 試合を見守っていた美鈴は、二郎に明るく声をかけました。 「まだまだ。お前の分も勝つんだからな」 またまた気取った微笑。 「……そうだね。やっぱり、あたしの分も勝ってもらわなきゃね。 勝って兜の緒を締めよ、だよ」 「よし!」 固く締めた面の紐を一層強く結びなおし、二郎は決勝へと向かいました。 ********** そして、二郎は見事勝利。大会初参加、初優勝です。 みんなで、手を取り合って喜びました。 「いやあ、でもね、二郎君。まだまだ、これからだよ」 「え? 何が、ですか…」 「美鈴の気持ちを勝ち取るには、まだまだ、これからってことさ。 はっはっは」 「……そ、そうですね。兜の緒を締めなおします」 美鈴は、何も聞かなかったことにして、その場を離れました。 (こまった人たち……) でもなぜか、ほんのちょっと、口元がほころんでしまうのでした…… |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.10 2006/8/25 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 読書百遍 意 自ずから通ず[★★] (どくしょひゃっぺん い おのずからつうず) ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 「この本、難しいなあ」 ソファーに寝転がりながら、一朗が言いました。 「なんの本だ?」 出勤前のお父さんが、一朗にたずねます。 「中学校で、課題図書になってる本なんだけど……」 「ああ、なるほど。この作家知ってるよ。確かに、おまえにはちょっと難しい かもな」 おまえには……と言われて、ちょっとムッとした一朗。 「でも、もう3回くらい繰り返して読んだんだよ」 「3回じゃ少ないだろう。読書百遍、意、自ずから通ず、だよ」 「100回読めってこと?」 「そう。100回も読めば、自然と意味が分かってくるってことだな」 「100回も読めるわけないよ」 「読もうと思えば読めるだろ」 …… 一朗は、納得がいかない様子。 「じゃあ、行ってきまーす」 「あ、ちょっと待ってよお父さん。 お父さんは、1冊を100回も読んだことあるの?」 「え? ……ないよ」 ニヤリとしながら、父は扉の向こうに消えました…… 「なーんだ。やっぱりね……」 一朗は、そう思いながらも、また本のページをめくりはじめました…… |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.9 2006/8/15 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 他人行儀[★★★] (たにんぎょうぎ) ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 娘「だ・か・ら、絶対お母さんの方が間違ってるんだってば!」 母「な〜に言ってるの!? こっちの道に決まってるじゃない!!」 娘「だって、ほら、この地図見てみなよ!!」 母「さっき見たわよ!」 夏休み、ちょっと遠出した先で、母と娘のけんかのようです… 娘「ふんっ……もう知りませんから」 母「…? …なによその態度」 娘「だから、もう、知りませんから。私はこっちに行・き・ま・すから」 母「あっそう…勝手に行けば」 娘「そうします」 2人はその場で立ち止まって、しばし沈黙。 母「ちょっと前とは打って変わって、他人行儀ね」 娘「え? なんですか」 母「他・人・行・儀」 娘「ふん……そんな言葉知りません」 母「今のあんたのような態度のことを言うのよ」 娘「あっそ……」 あれこれ言いながらも…… 2人は結局、また一緒に歩いていました…… |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.8 2006/8/8 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 過ちては則ち改むるに憚ること勿れ[★★★★] (あやまちては すなわち あらたむるに はばかることなかれ) ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 「お父さん。今日ね、学校の帰りに危ない人、見たよ」 「へ〜。危ない人?」 聞けば、こういう話でした。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 横断歩道で赤信号を待っていた。 ほかにも、10人くらい待っていた。 すると突然、ちゃんと待っていたはずの1人のスーツを着た男の人が、自信 ありげに横断歩道を前進した。 まだ赤なのに。 どうやら、「車の信号が赤になったから、歩行者信号は青になるはずだ」と 思い込んだらしい。 でも、そこはスクランブル交差点だった。 車の信号はいったんは赤になったけど、またすぐ青になった(左折だけ)。 だから、歩行者信号はまだ赤のままだった。 勘違いして前進したその男性は、5歩くらい踏み出してから、ようやく自分 の間違いに気がついた。 でも、周りの人が見てるから恥ずかしくて、後退するわけにもいかなかった らしい。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「それでね、車がそこに来て、ものすごい音でクラクション鳴らしてたよ」 「え〜! それで、その人、大丈夫だったの?」 「うん。急いで走って、向こう側に渡っちゃった!」 「うわっ… そりゃあ、確かに危ないね」 少しして、お父さんは思い出したように言いました。 「なあ。この言葉知ってるか?」 「なに?」 「過ちては則ち改むるに憚ること勿れ」 「……??」 「まあ要するに、だ。 自分が間違っていたと気がついたんなら、それを直すのをためらうな、って ことだな」 「ふ〜ん。 でもほんとそうだね。あの人、あの時、すぐに後ろに5歩下がればよかった だけだよね〜」 「でも、おまえなら、さがれるか?」 「う〜ん……ちょっと自信ないかも」 「だよな。お父さんも同じだよ。 すぐに直すのって、なかなか、難しいことなんだよな」 ********************************** これは、実は大きな教訓をはらんだ言葉です。 ケンカをしていて、 「自分の非に気づいたが、いったん振り上げた拳をおろせなくなった」 ということ、よくあるはずです。 また、これが国と国との問題になったら、どうでしょうか。 戦争も、いわば、振り上げた拳をおろせなくなった両者の、プライド競争な のではないでしょうか。 もし、過ちに気がついたのなら、そこですぐ、潔く手を引くべきです。 後退すべきなのです。 おりしも、原爆の日。そして、終戦記念日。 おりしも、死者・行方不明者が1000人も出ているという戦争が、日々報 道される中。 こんな言葉を子どもに伝えるのも、大切なことですね。 |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.7 2006/8/2 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 大器晩成[☆☆☆] (たいきばんせい) ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 中学入試まであと半年。 昨夜塾で返された合否判定模試の答案を、母と娘が見ています。 「……またこんな点数とっちゃいました、お母さん」 「そう…ね……」 美奈子もお母さんも、がっかりです。 焦りや苛立ちを通り越して、あきらめの境地。 夏休みだというのに、朝から落ち込みモードです。 窓の外に揺れる緑を眺めていた母でしたが、突然娘に向き直って一言。 「あのね。 大器晩成、っていう言葉、知ってる?」 「たいきばんせい……あ、知ってる。 前、担任の先生が出していた学級通信のタイトルが、それだったかも」 「そういえば、そうだったね。意味もわかる?」 「う〜ん……わすれちゃった」 「将来、ほんとうに驚くような成果を上げる人は、子どもの頃はたいしたこと がないものだ、っていうような意味」 せっかく励ましてもらったのに、美奈子は一層首をうなだれました。 「そっか…。わたしって、たいしたことないよね……」 「いや、そういうことじゃなくて……」 お母さん、ちょっと苦笑い。 「ノーベル賞を取った人も、子どもの頃は全然勉強できなかった、ってよく テレビで言ってるでしょ」 「わたし、別にノーベル賞取りたいなんて思わないよ。 それに、わたし、“全然”できないわけじゃないもん」 お母さん、またまた苦笑い。 …と、そのとき、網戸を通して、さわやかな夏の風が吹き込んできました。 「ま、いいや! 大器晩成だもんね。気楽にやってみるよ…」 美奈子は、ひとつ大きく深呼吸して立ち上がると、そう言って部屋に入って しまいました。 受験について、あらためて考えさせられる朝でした。 |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.6 2006/7/24 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 備えあれば憂いなし[★★] (そなえあればうれいなし) ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 「あぁ…雨、ふってきちゃいそうだなぁ…」 電車の中。 あや子は、窓に顔を近づけて空を見上げると、そうつぶやきました。 たしかに、あやしい雲ゆきです。 隣に座っているお母さんもちょっと不安そう。 「困ったわねぇ。いつもなら折りたたみ持ってるんだけど…… たまたま持ってないし」 夏休み、ちょっと遠出してショッピング。 初めて行く、新しいデパート。 最初はルンルンの2人でしたが、ちょっと暗い気分に…… 「備えあれば憂いなし、ってことね」 と、お母さん。 「え? なに?」 「あらかじめ準備しておけば、心配しなくて済む、ってこと」 「……ほんとだね」 ********** 駅に着くと、お母さんはあや子に千円札を渡しました。 「心配するのいやだから、これでビニール傘2本、買ってきて!」 「うん、わかった」 あや子は、ホームを上がったところにあるコンビニで傘を買いました。 「これで心配なし、っと」 2人が改札を出るとき、外ではもう雨が降り始めていました。 「買っといてよかったね」 と、お母さん。 「うん」 …と、そのとき、あや子は近くの通路に気がつきました。 「あれ? もしかして、あっちの道、デパートへの近道なんじゃない?」 そこには、新しいデパートのポスターがたくさん貼られています。 そしてたくさんの人が、そちらへ歩いていきます。 「あ、ほんとだ……ってことは、外に出なくていいの? この傘、いらないってわけ?」 「そうみたい」 どうやら、駅直結のデパートだったようです。 先に傘を買ったのは、勇み足でした。 「…でも、家に帰る頃もまだ降ってると思うよ……ね、あや子?」 「うん…こうなったら、もっとザーザー降ってほしいね」 ********** でも結局、地元の駅に帰り着いたときには雨が止んでいました。 「結局この傘、使わなかったね」 と、あや子。 「そうね。やっぱり、最初に持って出なきゃだめね」 「うん。…備えあれば憂いなし、だね」 |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.5 2006/7/17 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 過ぎたるはなお及ばざるが如し[★★★] (すぎたるはなおおよばざるがごとし) ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 「えりこ、まだ寝てるの?」 「……」 「え・り・こ! 起きなさい!」 朝10時半。 部屋の扉を開けて、お母さんが声をかけています。 えりこは、まだふとんの中。 中学1年生のえりこは、毎日遅くまでバスケ部の練習。 夏休みに入ったというのに、昨日もクタクタになるまで特訓でした。 えりこは、ふらふらと体を起こしながらつぶやきました。 「…ぅるさぃなぁ……寝る子は育つとか、きのう言ったくせに……」 部屋に入ってきたお母さん。 「寝すぎる子は逆に育たないのよ」 「へりくつ…」 (どうせこれ以上寝てても暑いから起きよう……) えりこは、仕方なく起きることにしました。 ********** 朝食をほおばっていると、お母さんが言いました。 「過ぎたるはなお及ばざるがごとし、って知ってる?」 「なにそれ」 「どんなにいいことでも、やり過ぎはよくない、ってこと」 「……」 えりこは黙って食べ続けます。 (なんだか、おなかの調子が悪いな……やっぱり寝すぎたかな……) そう思ったえりこは、いつも2杯飲んでいる牛乳を、今日は1杯にしておき ました。 「えりこ、もっと牛乳飲めば? 今日も練習でしょ。栄養とっておかないと」 「栄養あっても、飲みすぎはよくないよ……過ぎたるは…及ばざるがごとし、 ってことで」 えりこは、ニヤッとしながら言いました。 「もう覚えちゃったの…」 苦笑するお母さん。 「うん。ごちそーさま」 えりこはちょっと勝ち誇った気分。 なんだか急に目が覚めてきました。 「さ、今日もがんばろ」 *********** 薬も過ぎれば毒となる、という言葉もあります。 |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.4 2006/7/9 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 郷に入っては郷に従え[★★] (ごうにいってはごうにしたがえ) ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 「え? お茶? なんか変な感じ…」 良太くんはつぶやきました。 (給食でも、自分の家でも、ご飯のときにはいつも牛乳を飲みながら食べてい たのに……) 夏休み。 家族みんなで、お母さんの実家に来ている良太くん。 食事のときにお茶が出てきて、ちょっと戸惑い気味のようです。 しかも、夏なのに、熱いお茶…… 「…お母さん、牛乳ないの?…」 おばあちゃんに聞こえないように小声でつぶやいた良太くん。 「おばあちゃんはあんまり牛乳飲まないのよ」 「そっか…」 (せめて冷たい麦茶がいいな…) そう思っていた良太くんに、お母さんが一言。 「郷に入っては郷に従え、っていう言葉知ってる?」 「……?」 「いつもと違う場所に来たら、そこに住んでいる人のやり方に従え、っていう こと」 微笑みながらそう話すお母さんの言葉…… 分かったような、分からないような。 でも、良太くんはあきらめてお茶を飲みながら食べました。 そのやりとりを見ていたおばあちゃん。 「良ちゃんは牛乳がいいのね。明日は用意しとくよ」 おばあちゃんのやさしい一言に、照れ笑いの良太くんでした。 *********** 夏休みに帰省すると、“郷に従う”べき場面がたくさんありそうです。 いつもはベッドなのに、布団だったり。 虫が入ってくるのに、網戸なしで窓が開けっ放しだったり。 でも、そういうちょっとしたことが、子どもの体験の幅を広げ、子どもの育 ちを支えるのです。 ちょっとがまんして“郷に従う”ように、声をかけましょう。 ちなみに、「郷」は、「故郷」の郷です。 「村」や「さと」などの意味があります。 このことわざ、英語ではこうなります。 When in Rome, do as the Romans do. |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.3 2006/7/2 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 岡目八目(傍目八目)(おかめはちもく)[★★★] ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 一郎と妹の優子が、オセロをしています。 そこへ、2人の弟・末っ子の三郎がやってきました。 近くに座り、じ〜っと、ゲームの行方を見ています。 「なんだよ、じっと見るなよ」 「ほんと。じゃまだから、あっち行っててよね」 2人は、三郎をけむたがります。 「いいじゃん、別に」 三郎は、ちょっと離れましたが、近くのソファーに座って相変わらず見てい ます。 すると…… 「あっ……ゼッタイに勝てる場所、分かっちゃった……」 そんな三郎の言葉を無視して、一郎はコマを置きました。 するとまた三郎が…… 「え〜、だめだよ兄ちゃん、それじゃ負けるよ?!」 「うるさいな! 三郎はだまってろよ!」 「ほんと。静かにしててよ」 ***** こういう場面、よくありますね。 横で見てると、当事者よりも先がよく見えてしまうものなのです。 こんなとき、あなたが親ならどうしますか。 三郎を叱りますか? それとも、2人をなだめますか? どちらの方法も、まあよいのですが…… ここは、あまり目くじらを立てず、笑顔で言葉をかける程度にしましょう。 「岡目八目って言うからなあ。横から見てると、よく分かるもんなんだよ。 まあ、三郎の気持ちも分かるけど、ここは黙ってないとな」 ***** もともとは、囲碁で使った言葉です。 横で見ている人は八目先(八手先)まで読めてしまう、という意味です。 ちなみに、ワールドカップサッカーを見ながら様々に批評した方々も多いで しょうが、これも結局は、岡目八目。当事者になれば、そう簡単にはいかない ものなのですね。 |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.2 2006/6/25 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ 弘法にも筆の誤り[☆☆] ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ 夏祭り。 9枚のパネルをボールで何枚落とせるかを競う、いわゆる「ストラックアウ ト」のゲームに、サトシくんが挑戦します。 友だちのマサルくん、ケイコちゃん、ユウタくんが、横で見ています。 小学生の野球チームに所属してエースピッチャーをしているサトシくんは、 心の中でつぶやきました。 (ここはバッチリ決めて、ケイコちゃんにかっこいいところを見せなくちゃ) 見ている3人は、期待をこめて口々に言いました。 「サトシなら、9枚全部落とせるんじゃないか?」 「ほんとほんと」 「余裕でしょ〜」 1枚目、2枚目、3枚目…… なんと8枚目まで成功し、拍手喝采を浴びました。 サトシくんは、(どんなもんだい)とばかりにガッツポーズ。 「あっといっちまい! あっといっちまい!」 マサルくんたちから、あと1枚コールが沸き起こります。 「よしっ!」 気合を入れて、サトシくんはスピードのあるボールを投げました。 ところが、サトシくんの渾身の一球は…… パネルを大きく外れてしまいました。 「あ〜……」 見ていた3人も、いつのまにかその周りで応援していた大人たちも、みんな ためいき。 サトシくん、がっくり肩を落としました。 そのとき、ケイコちゃんが言葉をかけてくれました。 「サトシくん、“弘法にも筆の誤り”って、きのう先生に習ったでしょ… プロ野球の選手だってきっと1枚くらいミスするよ。気にしないで」 「うん……」 なぐさめられて嬉しかったけど、ケイコちゃんにそう言われて、なんとも複 雑な心境のサトシくんでした…… ※ 一緒に来ているのがお母さんだった場合も、「弘法にも筆の誤り」は使え ますね。 【どんなにその技芸にすぐれている人でも、ときには失敗することがある】 同じ意味の言葉には、「猿も木から落ちる」「河童の川流れ」があります。 |
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 子育ての この場面には この言葉 No.1 2006/6/20 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━●○ ちりも積もれば山となる[☆] ○●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆★ せっかく新しい漢字練習ノートを買ってあげたのに、ケンジのノートは、 ずっと真っ白。 「だって、先生が宿題出さないんだから、やらなくてもいいでしょ」 実はケンジくん、漢字があまり得意ではありません。 もちろん、本当は、できるようになりたいのですが…… 「今日も学校で新しい漢字習ったよね」と、お母さん。 「うん」 「どんな字? ドリル見せて」 ちょっと面倒そうな顔をしながらドリルを見せてくれました。 「じゃあ、この『強い』っていう字だけでいいから、練習すれば?」 「1つだけ書いても意味無いよ…」 「そんなことないよ。ちりも積もれば山となる!」 1つくらいなら…と、ケンジは漢字を書き始めました。 「強い 強い 強い 強い 強い……よし、1行うまった」 そして、すぐ遊びに行ってしまいました…… でも、やらないよりはずっといいですね。ちりも積もれば……です。 |